2019年09月16日12時59分掲載
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コラム
大学の講義にもっと英語を 村上良太
大学の講義に英語の導入を、という論旨を僕が語るのは適任ではないかもしれないですが、思っていることを書きたいと思います。大学の講義に英語を導入したら、日本語で思考できなくなるために研究の水準が下がるとか、教育のクオリティが下がる、とか、あるいは植民地主義的だと言った批判があることは知っています。また、英語の講義を日本でやることは確かにある種の滑稽さを感じさせますし、教える側にも教わる側にもこれまで以上に負担を与えることになることも理解できます。
そうではあるのですが、講義室で一度に数十人とか数百人向けに講義をする場合であれば英語で話す、ということは教授が普段研究している専門領域の一部を切り取ったPRみたいなものと考えることはできないのでしょうか。つまり、普段は日本語で研究しているけれど、講義する時は英語に変換する、ということではないかと思うのです。デジタル映像編集では編集ソフトを何でやっていても、最後の実際の映像に「書き出す」際に、ある形式を選択することになりますが、講義をそれにたとえて言えば、英語で書き出す、ということではないでしょうか。それは学生とのインターフェイスと言う局面の作業です。だから、英語で講義を行ったからと言って、研究の質が落ちる、ということはないのではないかと思えるのです。もちろん、ゼミの時みたいにもっと細かいコミュニケーションが必要な時は英語でやるのはもっと負担が大きいかもしれませんから、英語でやる場合を一定の枠にとどめておくのも手ではないでしょうか。
英語の講義は学生にも負担であるでしょうが、しかし、英語で講義を受けることに慣れることができたら、インターネットやソーシャルメディア、あるいは実際に海外旅行をしたり、外国人の訪日客と会ったりしたときに、話をするうえで大きな力になるはずです。日本のメディアを見ると、どんどん報道出来ない領域が拡大していますし、報道自体もかなり政府見解のバイアスのかかったものになっています。しかし、英語でニュースを読むことができると、違った視点から日本を見ることができますし、日本に流入しない膨大な情報源にアクセスできます。この違いは大きいです。ニュースだけじゃなくて、あらゆる分野で海外で最先端の刺激的な講義が行われています。
さらに英語帝国主義と言う人もいますが〜確かに英語を母語にする人に有利ではありますが〜英語をやっておくと、ロシア人や中国人、韓国人と言った周辺国の人たちの多くと交流できるようになります。決して英語圏の人間に限定されません。現代のラテン語が英語です。そして、英語を導入することは恥ずかしさを伴うわけですが、というのも間違ったら恥ずかしい、ということもありますし、間違わなくても日本人の前で英語で話す、というのはかなり恥ずかしいことのように自分の経験を思い出しても思います。でも、その恥ずかしさを越えることが大切ではないかと思います。間違うことを恐れて何もしないより、少々間違ってもいいから積極的に外国人とコミュニケーションをする方が何年かすると大きなプラスになると思っています。大学の講義がその最初のステップになると良いのではないでしょうか。テキストも講談社のバイリンガルシリーズみたいに英語と日本語の対訳にすればよいのです。講義で聞き取れなかったとしてもテキストで読んでおさらいができます。
今の安倍政権を見ると、河野太郎防衛大臣もアメリカのジョージタウン大学に留学していますし、小泉進次郎環境大臣もコロンビア大学大学院に留学しています。外務大臣の茂木敏充氏もハーバード大学ケネディ行政大学院を出ています。安倍首相もカリフォルニアに語学留学した経験者ですし、高市早苗総務大臣は米民主党議員のもとで見習いをしていたと聞いています。安倍政権はナショナリストの政権である反面、ちょっと見ただけでもアメリカ留学経験者がたくさんいます。大学の講義を英語か日本語か、と言っている脇で、政治家や放送局や大学人、企業経営者の子弟たちは潤沢な資産の力を活用して英語圏に留学しています。実態はこうなのです。彼らを模範に、というのではないのですが、実際に海外の様々な人と交流することはその人の人生の大きな資産になるのだと思います。しかし、そういう経験を積むことができるのは決して多くはないでしょう。
確かに、英語での講義は負担もありますからマイナス面もあるでしょうが、プラスマイナスを考えると、プラスではないかと思っています。日刊ベリタでも、僕だけかもしれませんが、記事を少しずつバイリンガル化しています。日本だけじゃなく、海外の人とシェアしたいと思うからです。日本で英語がある程度日常的に活用出来たら、外国人たちにとっても日本に来る障壁が1つ減ると思っています。そのことは多様性を大切にするためにも良いことだと思います。
村上良太
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