2019年10月14日14時25分掲載
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コラム
路上生活者を避難所から排除した台東区の対応は恐ろしい
BUZZFEEDの記事によると、台東区で路上生活者たちが台風の避難所の使用を拒否された。驚いたことに、これは特定の職員の対応の問題と言うよりも、台東区災害対策本部の決定だという。その基準は台東区内に住所のある人だけを対象にした、ということだ。だから、台東区内に住所を持たない路上生活者は避難所に入れてもらえなかった。これは背筋が凍るような事件だと思った。多くの人は自分がホームレスになることはないから他人事と看過してしまいがちだろうが、この処置を容認したら、今後はますますひどい対応にエスカレートする可能性もある。
そもそも区の決定とその厳密な適用は、今回の場合、日本国憲法で認められた生存権を否定するものではなかろうか。区の行政は憲法の下にあるのだ。もし将来、様々な災害や紛争などが起きて避難所の使用を求めた時に、<税金を一定額納めていないと使用させない>と言う風に、もし行政が決定したらどうなるだろうか。いったん生存権というような縛りを外すことを認めてしまったら、どこまででもエスカレートしかねない。作家の安倍公房は小説「箱舟さくら丸」で核シェルターに入れることのできる人間の選別を描いていた。安倍公房はこれこそが未来のファシズムだと訴えていた。ということは、今回の台東区の事例もその例に入るだろう。
欧州の人に今回の事例を紹介すると「どうしてそんなひどい人がいるの?」という反応が返ってきた。イタリア人の女性からだ。「想像力が乏しいからでしょう」と答えたら、「いや、心がないのです」という答えが寄せられた。フランス人の女性は「人間性が欠けています」と言った。避難所にいた役場の人は区の災害対策本部の決定を粛々と実行していたに違いない。もし上司の命令に背いたら出世できなくなるかもしれない。それでも路上生活者を拒否した時に葛藤はなかったのだろうか。今、日本の入管施設では餓死や異常な死亡事件、そしてハンガーストライキなどが起きていると報道されている。こうした痛切な事件がたくさん積み重なることで見えてくるのは行政や裁判所が下す愚かな決定が、心の無い人々によって運用されて今の日本という国が構成されているということだ。
村上良太
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