2019年12月13日15時08分掲載
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関生反弾圧市民情報センター
関西生コン支部に対する司法の弾圧は憲法や労働法に違反する重大な権利侵害である 全国の労働法学者が声明
219年12月10日の京都新聞がほぼ半ページにつぶして、関西生コン支部に対する司法の弾圧は憲法や労働法に違反する重大な権利侵害であることを指摘する労働法学者の声明を掲載しました。記事は以下のような前文で始まっています。(大野和興)
京都府警や滋賀県警などが、生コンミキサー車に運転手らが加入する全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)の役員や組合員を威力業務妨害や恐喝未遂、強要などの疑いで逮捕している一連の事件について、労働法を専門にする研究者78人が9日、「憲法と労働組合法で保障された正当な労組活動を犯罪行為として処罰している」として抗議する声明を出した。(京都新聞12月10日朝刊より)
声明は労働法学を代表する研究者24人が呼びかけ、全国の大学や研究機関に所属する労働法の研究者が54人が賛同したものです。「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできないー関西生コン事件についての労働法学会有志声明」と題された声明文は「労働組合運動を理由とする刑事事件としては、戦後最大規模といえます」としたうえで、その違法性を三点にわたって的確に指摘しています。
一つは、関生の組合活動に対する捜査上の違法性。声明は以下のように述べています。
「労働者の労働条件の改善を求める行為や、法令無視による不公正な競争を防止しようとする組合活動が、当該組合活動の正当性を判断されることもなく、違法行為とされ刑事処罰されるならば、憲法28条の労働基本権保障も、労働組合法による組合活動保障も絵にかいた餅になってしまいまおお」
二つ目は共謀罪先取りという視点です。以下、声明文です。
「公訴理由では組合役員や組合員の共謀が強調され、当該組合活動に参加していない者も逮捕、起訴されています。19世紀初頭、コンスピラシー(共謀)を理由に、労働組合運動を弾圧した労働基本権成立史の一コマをみるようでもあります。組織犯罪対策課が捜査主体となって、共謀立証を理由に長期にわたり身柄を拘束するという手法からみると、先に成立した共謀罪法(組織犯罪処罰法)が直接間接に影響を与えているのではないかとも危惧しています」
三点目は、警察、検察、裁判所への警告です。労働法学者はこの弾圧は司法ぐるみで行われているとみているのです。
「警察官や検察官には、憲法遵守義務を負っている公務員として、憲法28 条の団結権・団体行動権の保障、その確認としての労組法 1 条 2項の組合活動の刑事免責を踏まえて、適正な法執行に努めることを強く求めるとともに、裁判官には、労組法上の適格組合に対して、「反社会的集団」との予断をもつことなく、組合活動の正当性の有無を真摯に判断することを求めます」
声明の全文は以下の通り−
関西生コン事件についての労働法学会有志声明 (12/9)
声明文
組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない
-関西生コン事件についての労働法学会有志声明
昨年から今年にかけ大阪・滋賀・京都等の関西地区で、労働組合の委員長を筆頭に、副委員長、書記長、一般組合員などが相次いで逮捕、起訴される事件が発生しています。本年12 月 9 日現在で、組合員の逮捕者数は延べ 81 名、起訴者数は延べ 69 名にのぼっています。委員長は6 度、副委員長は 8 度逮捕され、両者とも勾留期間は 1 年 3 ヶ月(460日)を超えています。一般メディアではほとんど報じられていませんが、本件は、連帯労組(全日本建設運輸連帯労働組合)の関生支部(関西地区生コン支部)の組合活動をめぐる事件であり、労働組合運動を理由とする刑事事件としては、戦後最大規模といえます。
本件で威力業務妨害と恐喝未遂の公訴事実とされているのは、1年以上前の日常的な組合活動です。運転手等の組合員が建設現場で法令の遵守を求める「コンプライアンス活動」も、産業別労働組合や職業別労働組合に見られる一般的な組合活動です。連帯労組は、労働組合法上の労働組合として認められている適格組合ですから、何よりも労働組合の組合活動の正当性の有無の観点から、関生支部の組合活動を判断して対応すべきものです。
現在の警察や検察は、組合活動としての正当性の有無を具体的に検証することなく、連帯労組の活動を「軽微な違反に因縁をつける」反社会的集団による妨害行為と捉えて対応しているとしか思えません。県によっては、「組織犯罪対策課」が捜査主体となり、一部の裁判所が傍聴人席に遮蔽板まで設置するあり様です。労働者の労働条件の改善を求める行為や、法令無視による不公正な競争を防止しようとする組合活動が、当該組合活動の正当性を判断されることもなく、違法行為とされ刑事処罰されるならば、憲法28条の労働基本権保障も、労働組合法による組合活動保障も絵にかいた餅になってしまいます。
また、公訴理由では組合役員や組合員の共謀が強調され、当該組合活動に参加していない者も逮捕、起訴されています。19世紀初頭、コンスピラシー(共謀)を理由に、労働組合運動を弾圧した労働基本権成立史の一コマをみるようでもあります。組織犯罪対策課が捜査主体となって、共謀立証を理由に長期にわたり身柄を拘束するという手法からみると、先に成立した共謀罪法(組織犯罪処罰法)が直接間接に影響を与えているのではないかとも危惧しています。
私たちは、労働法を研究する者として、今回の事件において、警察・検察当局の憲法を無視した恣意的な法執行に強く抗議するとともに、戦後積み上げられてきた組合活動保障を意図的に無視するものとして重大な懸念を表明するものです。警察官や検察官には、憲法遵守義務を負っている公務員として、憲法28 条の団結権・団体行動権の保障、その確認としての労組法 1 条 2項の組合活動の刑事免責を踏まえて、適正な法執行に努めることを強く求めるとともに、裁判官には、労組法上の適格組合に対して、「反社会的集団」との予断をもつことなく、組合活動の正当性の有無を真摯に判断することを求めます・
関西生コン支部事件に関する声明文呼びかけ人一同
青野 覚(明治大学教授)
浅倉むつ子(早稲田大学名誉教授)
有田謙司(西南学院大学教授)
石井保雄(獨協大学教授)
石田 眞(早稲田大学名誉教授)
緒方桂子(南山大学教授)
唐津 博(中央大学教授)
毛塚勝利(労働法学研究者)
島田陽一(早稲田大学教授)
武井 寛(龍谷大学教授)
土田道夫(同志社大学教授)
角田邦重(中央大学名誉教授)
道幸哲也(北海道大学名誉教授)
名古道功(金沢大学名誉教授)
西谷 敏(大阪市立大学名誉教授)
浜村 彰(法政大学教授)
深谷信夫(茨城大学名誉教授)
藤本 茂(法政大学教授)
三井正信(広島大学教授)
山田省三(中央大学名誉教授)
吉田美喜夫(立命館大学名誉教授)
米津孝司(中央大学教授)
脇田 滋(龍谷大学名誉教授)
和田 肇(名古屋大学名誉教授)
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