2019年12月23日23時01分掲載  無料記事
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教育

高等教育無償化に向けて〜学生団体がハチ公前でデモ

今年5月、低所得世帯の学生を対象とした「大学等における修学の支援に関する法律」(修学支援法)が国会で成立し、来年4月から施行される予定である。同法について政府は、「大学等の入学金・授業料の減免及び返済不要な給付型奨学金の拡大を目的」と説明している。文科省は先日、現行の減免措置を受けている在学生のうち、新制度の枠から外れたり、免除額が減少したりする在学生に対しては、引き続き現行の制度を受けられるようにすると発表した。しかし、来年4月から入学する新入生は現行制度の対象外となり、「国立大の授業料減免は著しく後退する」、「在学生と新入生の間で格差が生じる」など、同法に対する批判の声は根強いものがある。 
こうした中、高等教育の学費や奨学金制度の改善を目指す学生アドボカシーグループ「高等教育無償化プロジェクトFREE」が12月22日、クリスマス前で賑わう渋谷ハチ公前広場において、「届けよう私たちの声 渋谷ハチ公前ラリー」を開催した。イベントでは、さまざまな大学の学生がリレートークの形式でスピーチを行い、学費値下げや現行の授業料減免制度の維持などを訴えた。また、「FREE」としては初の取組であるサウンドデモも行われ、参加者は「学費を下げてもっと学びたい。借金背負わず大学行きたい」などと声を上げた。 
 
リレートークに参加した「授業料値上げの中止を求める国立大学の会」に所属する男性は、「この会は今月7日、東京藝術大学、千葉大学、一橋大学、東京医科歯科大学の4つの大学で授業料値上げ問題に取り組む有志が結成した」と述べ、同会結成の目的として「授業料値上げの中止を求めること。みんなの声に耳を傾ける大学運営を実現すること」の二点を挙げた。そして、「大学入試改革問題で見られたように、声を上げることは決して無駄なことではない」と参加者に呼びかけた。 
 
金沢から参加した男性は、教育の機会均等の観点から「先日、文科省が現状の支援から外れる在学生の支援は継続すると発表した。なぜ、在学生までは支援があり、受験生には支援がないのか」と修学支援法の問題点を指摘した。 
 
「FREE」事務局長で東京大学に通う中野典さんは「修学支援法によって、来年度から免除が受けられなくなる学生が出るかもしれない」との懸念から、学内での署名活動を継続した結果、学生支援担当の副学長から「支援額が減少しないよう、影響が出ないようにする。また、東京大学では授業料の値上げを予定していない」との声明が発表されたことを紹介し、「私たちの運動が大きな身を結んだと思う」と行動することの大切さを訴えた。今後の活動については「東大だけでなく、他の大学でも免除が維持されるよう、これからも運動を続けていきたい」と前向きな姿勢を見せた。 
 
政府は高等教育無償化と謳っているが、実際は授業料減免や給付型奨学金の対象になる学生はごく一部に限られており、本当の意味での無償化には程遠い内容となっている。他方で、2021年から実施予定の「大学入学共通テスト」への英語民間試験及び国語・数学記述試験の導入延期も発表されており、日本の学生たちは前向きに進路を決められなくなっている。政府は、学生たちが安心して学べる環境の整備や法制度の構築を喫緊の課題として取り組む必要がある。 
現在、FREEでは活動の一環として、内閣総理大臣宛てのネット署名を集めている。高等教育無償化の問題に興味のある方は、署名を検討してみてはどうだろうか。 
 
「STOP!大学の授業料減免縮小と学費値上げ」 
https://www.change.org/p/%E5%86%85%E9%96%A3%E7%B7%8F%E7%90%86%E5%A4%A7%E8%87%A3%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89%E6%AE%BF-stop-%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE%E6%8E%88%E6%A5%AD%E6%96%99%E6%B8%9B%E5%85%8D%E7%B8%AE%E5%B0%8F%E3%81%A8%E5%AD%A6%E8%B2%BB%E5%80%A4%E4%B8%8A%E3%81%92?recruiter=860860903&recruited_by_id=76e81920-1fa4-11e8-9799-4b4a38c0fc19 


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