2020年01月02日22時34分掲載  無料記事
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環境

化学物質過敏症、欧米でも深刻な事態に オーストラリアの研究者が調査、「引き金は香料入り製品」

 化学物資過敏症の広がりが欧米でも深刻な事態になっていることが、オーストラリアの研究者によって明らかになりました。メルボルン大学工学部に所属するアン・スタインマン氏が2019年2月に発表した「化学物質過敏症の国際的蔓延、および香料入り消費者製品の影響」によると、米国、オーストラリア、スウェーデン、英国の4か国で、人口の19.9%が化学物質過敏、32.2%が香料感受性を示したと報告しています。(大野和興) 
 
 スタンマイン氏は、化学物質過敏症の有病率を調査すると同時に、医学的に診断された複数の化学的感受性(MCS)、芳香剤感受性(芳香製品からの健康上の問題)、喘息/喘息様状態、および自閉症/自閉症スペクトラム障害(ASD)との共罹患率についても調査しています。 
 
 まず人口に占める有病率についてみると、4か国全体で、人口の19.9%が化学物質過敏、7.4%が医学的に診断された化学的感受性(MCS)、21.2%がそのいずれかまたは両方、32.2%が香料感受性という結果が出ました。 
 
 次にその症状を見ると、人口の26.0%が喘息/喘息様症状を報告しており、そのうち42.6%が化学物質過敏症、57.8%が芳香過敏症と報告されています。また、人口の4.5%が自閉症/自閉症スペクトラム障害(ASD)を報告しており、そのうち60.6%が化学物質過敏症、75.8%が芳香過敏症であると報告しています。 
 化学物質過敏症と報告した人についてみると、55.4%が喘息/喘息様症状、13.5%の人が自閉症/ ASD、そして82.0%の人が芳香感受性です。 
 
 化学物質過敏症の人の28.6%は、過去1年間に職場での香料入り製品への暴露により、就業日または仕事を失っていることも明らかになりました。 
 
 こうした結果から、スタンマイン氏は化学物質過敏症が4か国で広く行き渡っており、6100万人以上が影響を受けていること、喘息や自閉症などの脆弱な個人が特に影響を受けていること、芳香のある消費者製品が健康、経済、社会への悪影響に寄与する可能性があることを指摘しています。 
 
 さまざまな化学物質の中でもスタンマイン氏が注目しているのは香り製品です。報告書は次のように述べています。 
「これらの暴露源の中で、香料入りの消費者製品は健康上の問題の主な引き金となります。フレグランス消費者製品(またはフレグランス製品)-フレグランスまたは香りを追加した化学配合製品-芳香剤、ランドリー製品、クリーニング用品、パーソナルケア製品、コロン、家庭用品などのアイテムを含むアイテム。製品の個々の「香料」は、通常、数十から数百の化合物の複雑な混合物であり、その多くは石油化学製品に由来しています」 
 
論文全文は以下で―― 
https://link.springer.com/article/10.1007/s11869-019-00672-1?shared-article-renderer#article-info 


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