2020年02月01日23時46分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202002012346316

欧州

イタリアの一大行事:クリスマスシーズンの変化〜チャオ!イタリア通信(11)

 カトリックの国であるイタリアにとってクリスマスは、大人、子どもにとって一大行事なのですが、ここ数年で変化が見られます。 
 
 12月25日のクリスマスはご存じの通り、イエス・キリストが生まれた日。それを祝うための準備は、カレンダー上では12月8日から始まります。12月8日はイタリア語で「インマコラータ」と言われる祝日で、日本語では「無原罪の御宿り」と訳されます。キリストの母マリアは原罪を受けてない、という教義で、1854年12月8日に教皇ピウス9世によって公認されたのが始まりです。習慣として、12月8日に各家庭や街中にクリスマス・ツリーを飾り付け、プレゼーペと呼ばれるキリストが生まれた場所、町をミニチュアで再現する飾り付けもされます。私の義理の両親も必ずツリーとプレゼーペを家の中に飾ります。プレゼーペには、キリストが生まれた馬小屋があるのですが、25日になるまで赤ん坊のキリストのミニチュアは飾らず、それ以外の町のミニチュアを飾っていくのです。こうして、25日にはキリストの誕生を祝います。このプレゼーペは、教会の中にも飾られたり、町によっては生きたプレゼーペと言って、本物の人たちがキリストが生まれた当時の服装をして、パン屋や鍛冶屋、羊飼いなど、キリストが生まれた当時の人々になります。たまに、生きたプレゼーペを見に行ったりしますが、子どもたちも興味津々で、こうやって宗教だけでなく文化としてのキリスト教を自然と身につけていくのだなと思いました。 
 
 私がイタリアに来た15年前は、このような感じでしたが、最近はイタリアのクリスマスも商業的になってきたと思うところもあります。11月に入ると、お店はクリスマスの飾り付けを始めるようになり、街中もイルミネーションを点灯し、クリスマスの雰囲気を盛り上げようとしているようです。また、以前は日曜日はお店が閉まっていましたが、ここ数年は日曜日もお店を開けており、「日曜は安息の日」というキリスト教の教えは薄らいできました。やはり、経済の動きには勝てないものですね。今は、ちょうど中国の旧正月にあたる時期で、グッチやプラダなどの有名ブランド店に中国語でHappy New Yearと書かれています。これも今年初めて見るもので、いかに中国人の旅行客が多いかを表しています。話はずれましたが、クリスマスは家に家族と親せきが集まり、一日一緒に過ごします。 
 
 そして、12月31日は友人たちと夕食をし、年越しはカウントダウンをするのが通常です。深夜まで起きているのは大変なのですが、友達とおしゃべりやゲームをしたりしながら、12時を待ちます。時には夕食の後に寝てしまい、12時前に起こされるということもあります。テレビでは、カウントダウンコンサートが放送されます。日本の紅白歌合戦とは違い、いくつかの大きな都市で野外コンサートが行われるので、各チャンネルがそれぞれのコンサートを放送します。コンサートでも、12時になるとカウントダウンを行い、花火が打ち上げられます。除夜の鐘に慣れていた私は、騒々しい年越しだなと最初は慣れませんでした。今年、我が家は友人家族のところで夕食を食べ、年越しを迎えました。5歳の子どもたちも昨年から12時まで起きて、一緒にカウントダウンをするようになりました。1月1日、元旦は祝日で一日ゆっくり過ごします。カレンダー上では、1月2日は普通の日なので、仕事も始まるのが通常です。ただ、1月6日が祝日のため、人によっては1月1日から6日まで休暇を取る人もいます。 
 
 1月6日はイタリア語で「エピファニア」と呼ばれる祝日で、日本語では「公現祭」や「主顕節(しゅげんせつ)」と訳されています。東方の三博士がキリストを訪問し礼拝することを記念する日となっています。この祝日の特徴は、「ベファナーナ」と呼ばれる魔法使いのおばあさんです。伝説上の人物ですが、箒にまたがった「ベファーナ」がクリスマスの飾りを持って行くと言われていて、12月8日から始まったクリスマスシーズンが終わりを迎えます。そこで、1月6日にはクリスマス・ツリーやプレゼーペを片づけるのが習慣なのです。この「ベファーナ」は、贈り物を大きな靴下に入れて、子どもたちに届ける人物で、ここでも商業的な面があるのですが、クリスマスが終わるとスーパーでは一気に大きな靴下が並びます。そして、テレビでも大きな靴下におもちゃなどを入れたプレゼントのコマーシャルが一日中流れます。 
 
 このように、12月25日から1月6日まではキリスト教にとっては大切な行事となり、クリスマス・シーズンとなります。子どもたちにとってはプレゼントをもらえる時期で、親にとっては次から次へともらうプレゼントのおもちゃをどう片づけるかと頭を悩ます時期です。ただ、子どもが生まれてからクリスマス・ツリーを一緒に飾り付けたり片づけたりするのは、素敵な思い出だと思うようになりました。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。