2020年02月13日21時40分掲載  無料記事
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コラム

映画「恋愛小説家」と米大統領選

  ジャック・ニコルソンが主演した「恋愛小説家」(原題:As Good As It Gets )は、恋愛に不器用な恋愛小説の名人が恋に目覚める、という風変わりな設定が功を奏して、ヒットを記録した。この映画でニコルソン扮する小説家が恋をする相手を演じたのはヘレン・ハントで、作家がいつも昼飯を食っている近所のレストランのウェイトレスという役だった。バツイチの彼女には一人息子がいて、少年はよく病気になる。だから、母親はいつもストレスがたまっているのだ。これまでにも再婚を考え、デートをしても子供の心配が途中で絡んでくるためにうまくいかない。 
 
  この映画にとって子供の病気におびえる母親という設定は非常に大きな意味を持っていた。それだけでなく、非正規労働者の彼女は健康保険に入っていないため、ちょっとした病気でも重い医療費が直撃するのである。日本の国民健康保険のような制度がアメリカにはなかったのだ。そうした背景がこの映画では底流に流れ、表のタイトルは「恋愛」を銘打っていても、その背後には現実を生きる苦しさが濃密に描かれていた。振り返ってみるとこの映画が世に出たのは1997年で未だ民主党のビル・クリントン大統領の時代なのである。共和党の大統領の時代ではないのだ。クリントン大統領の妻のヒラリー・クリントン氏が医療保険制度の確立を目指していたとしても。 
 
  それがなんとか実現したのは2009年に誕生したオバマ大統領の時代であり、この映画から12年もの歳月が流れている。そのオバマ大統領時代に出来上がったメディケアのシステムを再び共和党のトランプ大統領が骨抜きにしようとしており、一方でバーニー・サンダース候補ら民主党候補者たちが再び充実させようとしている。ニュー・ハンプシャー州の予備選挙を辛うじて勝利したサンダース候補はニュースのインタビューで勝因を聞かれて、みんなのための医療保険メディケアの導入は非常に人気が高い、と答えた。この課題は今もアメリカ人の有権者にとって重い意味を持っているのである。ジョージ・W・ブッシュ大統領の時代には、世界一リッチな大国だったアメリカで、医療費が払えないために我慢して救急車で運ばれるに至る患者が増える実情がレポートされていたものだ。 
 
  「恋愛小説家」で自分の恋愛に不器用なニコルソンは、お気に入りのウェイトレスのヘレン・ハントに早く職場復帰してほしいと思い、病気の少年の医療チェックを自分の持つコネで実現する。作家のちょっとした親切がきっかけになって二人のいろんな事件が始まる。子供を病気の心配から解放したというだけでも大きな一歩だったのだ。 
 
 
※As Good As It Gets - Trailer 
https://www.youtube.com/watch?v=rrRl2QQKkI8 
 
 
※Bernie Sanders: Bloomberg is trying to buy the election(CNN) 
https://www.youtube.com/watch?v=6i_vGQllwI0 


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