2020年02月16日18時32分掲載  無料記事
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国際

サンダース候補らの提案する「みんなのためのメディケア」(Medicare for all)  米報道番組はどう報じているか 〜がんと診断されて4割が2年以内に全財産を使い果たす〜

  今、始まったばかりの米民主党・大統領予備選で重要なイシューの1つがバーニー・サンダース候補が掲げる”Medicare for all”(全員のためのメディケア)となっていて、これは現在、複数の制度を併用しているのをシングルペイヤーというシンプル化した支払制度に転換しようということのようです。そこでこの制度に改めるとどのくらい財源がいるのか、などをめぐって議論が起きています。 
 
  すでに2018年暮れに米報道番組「デモクラシー・ナウ!」で、Medicare for allがいったい何か、そして、どのくらいその必要性があるのかをめぐって司会のエイミー・グッドマン氏が詳しい人々にインタビューを行っています。タイトルは以下。"Medicare for All: As Healthcare Costs Soar, Momentum Grows to Guarantee Healthcare for All Americans"(医療費の沸騰で、国民皆保険制度への期待が高まる)この番組の中で、医療保険制度の拡充が必要な理由として、全米看護師連盟のケリー・クーガン=ゲア(Kelly Coogan-Gehr)氏が語る内容は驚くべき実態です。 
https://www.democracynow.org/2018/11/30/medicare_for_all_as_healthcare_costs 
 
エイミー・グッドマン「では米国において健康に関して人々が最も気にかけているテーマは何ですか?」 
 
ケリー・クーガン=ゲア「医療費です。つまり、シングルペイヤー制度のことです。人々は『いったいどうやってその財源を工面するのでしょう?』と私に尋ねます。しかし、いったいどうしたら、シングルペイヤー制度なしで、できるのでしょうか?これは道徳や倫理だけの問題ではないんですよ。米国には現存の医療保険で医療費を十分カバーできない人が8500万人もいるのです(※医療保険に入っていたとしてもカバーできる治療や値段が保険会社の商品によってケースバイケースということでしょう)。公式的には、彼らの収入の10%が 医療保険の共同負担費用と医療費の自己負担に費やされています。アメリカ人の3人に一人が一生の間に、医療費が払えず破産しています。がんと診断されて2年以内に40%以上が全財産を使い果たしています。これは不当でしょう。私たちにはそのようなやり方は絶対に持続できないはずです」 
 
 
  医療保険で十分に支払いのできない人が人口の4人に一人未だに存在するのです。この実態が確かなら、医療費に対する庶民の抱える根深い不安が、バーニー・サンダース候補の追い風になっているのは間違いがないと思われます。穏健派かどうかというモード上の差異ではなく、何が必要かという民衆の欲求がこの選挙の鍵を握っているようです。 
 
 
 
村上良太 
 
 
 
■The Time for Medicare-for-All Has Finally Arrived(2019年3月の放送) 
https://www.democracynow.org/2019/3/7/the_time_for_medicare_for_all_has 
 ”Economist Robert Pollin at the University of Massachusetts and his colleagues recently released a comprehensive analysis of “Medicare-for-all,” confirming that not only would it not be too expensive, but would actually deliver better outcomes for less money. “Overall U.S. health care costs could fall by about 19 percent relative to the existing system,” they write. The cost savings factor in the increase in demand for health care, as close to 30 percent of people in the U.S. are either uninsured or underinsured and, as a result, simply don’t seek medical treatment when they need it, or preventive care.” 
 
  この放送では国民皆保険にした方が米国のトータルの医療費はずっと節約できるとエコノミストによって説明されている。その理由は健康悪化しても保険でカバーされれば貧者も躊躇なく病院に行けて、早期治療が可能になるからだと。試算では19%も現存の医療費よりコストダウン可能だとする。 
 
 
■How We Win Medicare For All - Kelly Coogan Gehr 
https://www.youtube.com/watch?v=7jmJeAQW8H8 
  サンダースインスティテュートでの講演から。全米看護師連盟のケリー・クーガン=ゲア氏は民間保険によって裁断された現在の医療保険では経済的な不平等が際立ち、白人至上主義などのファシズムの温床にすらなりうると指摘しているのが印象的だ。医療問題が民主主義の危機である、という認識まで起きているのである。この米国の医療保険産業は日本の国民健康保険にも介入したいと考えている。 


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