2020年02月22日01時39分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202002220139446
政治
米民主党 新鋭アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員(民主党・下院)の行動力
昨今、アメリカの民主党では「プログレッシブ」という言葉に勢いがあります。progressive 。これは進歩的、という意味です。動詞のprogressは前進する、進歩する、という意味。現在のアメリカの文脈で言えば、格差是正のため再分配を重視し、人種差別に反対、マイノリティや移民の人権重視、あるいは男女間の差別に反対、LGBTの権利の重視というような意味です。ニューヨークタイムズ電子版(2月20日)のカティ―・エドモンドソン記者による「オカシオ=コルテスが民主党進歩派の選挙陣営を構築中」と題する記事は、今の民主党の空気が伝わってくるかのようです。今、勢いのあるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員は頭文字を取ってAOCと呼ばれることもあります。
https://www.nytimes.com/2020/02/21/us/politics/aoc-democrats.html
アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員は2018年の下院議員選挙で民主党の重鎮を破って選出された民主党の新鋭です。オカシオ=コルテス議員は進歩派で、今回の大統領予備選でもバーニー・サンダース候補を支援しています。米国の下院は2年に一度、選挙があり、今年もあるわけですが、オカシオ=コルテス議員は自身も選挙を迎えるわけですが、そればかりか進歩派の若手を支援すべく、特に女性の立候補者のリストを作って選挙費用の寄付を募ったりなどの動きをしていると書かれています。民主党の重鎮で保守派あるいは穏健派のような議員に対して、進歩派の新しい立候補者を少しでも押していこうと言うのです。
オカシオ=コルテス議員はDemocratic Socialists of America(米民主・社会主義者)というグループに属しています。現在の民主党に対して「保守的」あるいは「中道」という風に見ており、批判的な見方をしています。conservative が保守であり、伝統主義を意味します。進歩主義と対になる概念です。中絶に反対したり、同性婚に反対したりする政治的な立場を指します。こうした言葉の背景には人類とは進化発展していくものだ、と考える歴史意識が潜んでいます。米メディアで盛んにプログレッシブ、という言葉が用いられるのは、民主党の保守化とそれに対するオカシオ=コルテス議員のような左派の進歩派の若手議員を描き分けるためには避けられない言葉なのです。それは共和党との距離の取り方の違いでもあります。
プログレッシブは進歩していこうとする立場ですが、必ずしも急激な変化とか革命を目指しているわけではありません。過激な立場とか急進主義はむしろ、radical (ラディカル)という言葉で表現されます。
オカシオ=コルテス議員はこのようにまだ30歳ながら、大きな人気と影響力を持ち、将来は大統領選に挑戦する可能性もあるでしょう。それだけでなく、今、このような若手が活躍することで、1990年代のビル・クリントン大統領の時代から右傾化してきた民主党を左に押し戻しつつあり、そのことは大統領予備選でも2016年にバーニー・サンダース候補を敵視し、中道のヒラリー・クリントン候補を支援した民主党幹部たちへの大きなプレッシャーになるかもしれません。
※AOC SAYS DEMOCRATIC PARTY IS 'CENTER-CONSERVATIVE PARTY,' ADDS 'WE DON'T HAVE A LEFT PARTY' IN THE U.S.(ニューズウィーク)
https://www.newsweek.com/aoc-says-democratic-party-center-conservative-party-adds-we-dont-have-left-party-us-1483218
ここではAOCは米民主党は中道政党あるいは中道保守政党であり、アメリカに左派政党はないと言っています。
※2018年6月、民主党のベテラン議員Joseph Crowleyを破ってAOCが民主党ニューヨーク14選挙区の下院候補に選ばれたというNYT記事。その後、11月には共和党候補を破り、29歳でアメリカ史上、最年少の女性の下院議員となりました。
https://www.nytimes.com/2018/06/26/nyregion/joseph-crowley-ocasio-cortez-democratic-primary.html
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。