2020年02月22日10時41分掲載  無料記事
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政治

社民党党首選と立憲民主党との合流に党内から批判と異論 党大会に支持者らが公開質問状

 社会民主党は22、23の両日の党大会で党首選を行うが、手続きをめぐり党規違反と批判する声が党支持者らから上がっている。また党中央が意欲的な立憲民主党との合流にも、地方組織には反対、慎重論が根強い。「憲法を指針に武力によらない平和と社会民主主義をめざす」党に、何が起きているのか。石川県の党支持者が又市征治党首に宛てた公開質問状と、それに対する党の回答を紹介する。 
 
<公開質問状> 
 突然このような書状を差し上げる失礼、何卒ご寛恕下さい。 
  私たちは、先月石川県連合代表に宛て「社民党に立憲民主党への合流見送りを求める」と題する文書(別紙をご参照下さい)を送った者です。支持者として、昨年末来『55年体制』の一翼を担った老舗政党がその歴史に幕を下ろすのか」(産経ニュース2020.1.2319:02 https: 
//www.sankei.com/politics/news/200123/plt2001230021-n1.html)といった報道を見聞するにつれ、現在の社民党の状況を危惧し、その将来を憂慮する想いを募らせております。 
第17回定期全国大会のご開催に当たり、以下の2点をめぐりご質問申し上げたいと存じます。 
 
1.党首選挙について 
「社会民主党党則」(1996年1月)は、先ず党首の公選に関し「選挙結果を直近の全国大会に報告し、大会の承認を得る」(2項)、「やむを得ない事由により選挙ができない場合は、全国大会又は、全国代表者会議を招集し選出することができる」とし(15条2・3項)、次いで副党首等の役員選出に付き「副党首、幹事長、副幹事長、政策審議会長、国会対策委員長、選挙対策委員長、常任幹事、会計監査、中央規律委員長及び規律委員は全国大会で任免される」(16条1項)と定めています。 
(1)上記の規定からは、先に党首選挙が実施され党首が決定された後、別の期日に召集される全国大会において、新党首の意向を踏まえた副党首等の役員が選出されることが本則であると解されます。党員の一票で党首を決する公選制は、党内における直接民主主義を実現する貴重な機会です。然れども今回は、2020年1月30日の常任幹事会席上、定期全国大会において通常の役員選考と併せて党首選挙も行う旨決定したと報じられています。この方式は党則に違反するのではないでしょうか。党員による投票を実施せず代議員によって選出するのは、党員の意思を蔑ろにするのではないでしょうか。 
(2)それとも、党則15条3項にいう「やむを得ない事由」が存するのでしょうか。「やむを得ない事由」が認められるのなら、具体的にご説明下さい。 
加えて、「やむを得ない事由」に該当するとされた先例がありましたら、ご紹介下さい。党員が参加する投票を行わずに党首を選出するのは、此の度が初めてと報じられていますが(朝日新聞デジタル2020年1月30日18時45分https://www.asahi.com/articles 
/ASN1Z5JDJN1ZUTFK01G.html)誤りでしょうか。 
 
2.立憲民主党との合流を志向する目的・意義について 
2019年12月初め立憲民主党の枝野幸男代表が、衆議院・参議院において統一会派を組む国民民主党の玉木雄一郎代表等と共に社民党の又市征治党首にも政党の合流を提案したことは周知の通りです。しかしその後、立憲民主党の福山哲郎幹事長と国民民主党の平野博文幹事長が「一つの政党になることを目指」す等として合流に向け一旦は合意し、両党の代表によって政策、時期及び新党名等に付き協議したものの、結局2020年1月末には合流の当面見送りを決定しました(東京新聞2020年1月22日)。「立憲民主党が呼びかけた国民民主党との合流の機運はほぼ消滅した」との見方さえあります(毎日新聞2020年1月22日東京朝刊)。両党の“事実上の破談”を受け、野党に近い無所属議員も合流に慎重な姿勢を示しているのが現状です。 
(1)立憲民主党が第一に合流することを欲した対象は、衆議院議員38名・参議院議員22名を擁する国民民主党ではないかと推測するところです。野党第2党の国民民主党との合流が中止されたにも関わらず、社民「党幹部は今後の合流交渉について「解散のタイミングをにらみながら進めていく」(朝日新聞デジタル2020年1月30日 5時00分https://www.asahi.com/articles 
/DA3S14346134.html)、又市党首が2月22・23日の定期大会前に枝野代表と会談して「地方組織の在り方などに関して意向を直接確認する」(時事ドットコム2020年2月6日16時58分https://www.jiji.com/jc/article?k=2020020601003&g=pol)等と発言しているのは、どういったお考えからでしょうか。これまでの共同会派、選挙協力に留まらず合流すると、どういった利点があるのでしょうか。 
なお、定期大会前に党首会談を行ったのであれば、話し合った内容をお教え下さい。 
(2)北海道新聞の記事には、又市党首は合流に意欲的で、「われわれはトーンダウンしていない。ひとつにまとまっていけると確信している」とのご発言が紹介されています(2020年2月7日)。このようにお考えになる根拠をお示し下さい。2020年1月29日に開かれた全国幹事長会議では、「合流の討論を続けるべきではない」(鹿児島)・「『共同会派の政党化“という認識には無理があるのではないか』(北海道)・「合流に反対」(新潟)・「合流ありきの議案を全国大会で出すべきではない」(茨城)といった意見が多く出されたようで(社民党ホームページhttp://www5.sdp.or.jp/#topics)、到底「ひとつにまとまっていける」とは思えません。 
(3)そもそも立憲民主党は、「日本の外交・安全保障の基本姿勢である国際協調と専守防衛を貫き、現実に即した政策を推進します。健全な日米同盟を軸に、アジア太平洋地域、とりわけ近隣諸国をはじめとする世界との共生を実現します」と綱領に定める政党です。この条項は、日本国憲法の基本原理の第一たる恒久平和主義と戦争放棄条項(同法9条)の改正を是とするものです。 
一方、「社民党宣言」(2006年2月)は、「国連憲章の精神、憲法の前文と9条を指針にした平和外交と非軍事・文民・民生を基本とする積極的な国際貢献で、世界の人々とともに生きる日本を目指します」として自衛隊を「現状、明らかに違憲状態にある」と位置付けるだけでなく、「縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消」するとまで踏み込んでいます。片や「非武装の日本を目指」す社民党、此方「専守防衛を旨とした平和主義」を「日本国憲法の基本原理」と捉える立憲民主党です。 
 かように理念が根本的に異なる両党が、協議を重ねれば「理念や政策、組織論や運動論をお互いに許容できる」ようになりますか。許容する必要があるのでしょうか。 
2020年1月初めに又市党首は、立憲民主「党への吸収合併を容認」し、「党名にこだわる必要はない」と述べたと報じられていますが(SankeiBiz2020.1.7 13:32 http://www.sankeibiz.jp /macro/news/200107/mca2001071332002-n1.htm)、党名を捨て根本理念を諦めることは、武力によらない平和と社会民主主義の旗を降ろすことを意味するのではないでしょうか。そうまでして合流を進める目的・意義をご説明下さるようお願い致します。 
沖縄県連合は既に、「1958年の沖縄社会党結党以来の理念を維持」する旨確認しています(琉球新報デジタル2019年2月22日11時5分https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1046431.html)。私たちは、どこよりも米軍基地の負担に苦しむ沖縄と社民党が、今後も共に闘って行けることを切に願っております。 
 
2020年2月22日 
金沢大学教員 平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会代表 石川多加子 
元北海道大学・金沢大学教員 いしかわ教育総合研究所共同代表    半沢 英一 
元北陸大学教員 元いしかわ教育総合研究所代表           田村 光彰 
 
社会民主党全国連合党首  又市 征治様 
 
<公開質問状への回答> 
2020年2月20日 
 
金沢大学教員 平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会代表 
石川多加子 様 
元北海道大学・金沢大学教員 いしかわ教育総合研究所共同代表 半沢 英一 様 
元北陸大学教員 元いしかわ教育総合研究所代表        田村 光彰 様 
 
社会民主党全国連合 
組織団体局長 中川直人 
 
「第17回定期全国大会に際しての公開質問状」へのご返答 
 
 春寒の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。日頃は私ども社会民主党に対しましてご支援・ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。 
 立憲民主党・枝野代表からの「よびかけ」につきましては、昨年12月から党内で議論を開始し今年1月29日の全国幹事長会議での議論をはじめ、この間各都道府県連合で議論が重ねられてきたところです。この案件につきましては、こうした党内での議論の到達点をふまえ、今月22日に予定しております、私どもの第17回定期全国大会で議論すべく、現在議案としてまとめ党内の議論に付しております。 
 党首選挙につきましても全国幹事長会議での議論をふまえ、時間的制約などを考慮し、定期全国大会での党首選出を決定したものです。 
 ご質問の内容は多岐に及んでおりますが、まさに定期大会で議論される内容そのものだと受け止めております。しかも2月18日付の質問状で、2月22日までの文書回答を求められておられますが、現在さまざまな、そして最後の大会準備を行っている時期でもあり、この回答期限内にお答えするのは、いささか無理があるのではないかと思います。 
 したがいまして回答につきましては、定期大会の議論を経たうえで、どのようなご返答をさせて頂くかを含め、検討させていただたく予定でおります。なお社民党内のこの間の経過や討論につきましては、資料等を含めて石川県連合にお尋ね、お問い合わせいただければと思います。 
結びとなりますが、重ねて日頃の皆さま方のご支援等に感謝申し上げ、取り急ぎの返答とさせていただきます。 
以上 


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