2020年02月24日04時15分掲載
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コラム
2020年最悪のシナリオ 3 サンダース大統領誕生で日本は孤立へ
今年最大の政治の変化は言うまでもなく民主社会主義者のバーニー・サンダース氏が大統領になる可能性が高いと言うことである。直近の複数の米世論調査でサンダース候補ならトランプ大統領に勝てる見込みとなっている。これが何を意味するか、というと、サンダース候補は歴代米大統領の中で最もフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領に近い思想・信条を持っている、ということだ。1929年に始まる大恐慌にニュー・ディール政策で立ち向かい、貧困者に手を差し伸べ、さらに日独伊のファシズム枢軸国に戦争を挑み、勝利した大統領でもある。
ルーズベルト大統領自身は戦時中に亡くなったが、彼の理想は日本統治にやってきた米官僚たちの中に色濃く生きており、それが民主的な日本国憲法の誕生に大きな影響を与えた。安倍首相が政治家として最大の敵としてきたのが戦後レジームであり、これらのニューディールの薫陶を受けて育った米官僚たちが支援して実現された戦後憲法である。そのルーズベルト大統領に近いサンダース大統領は安倍首相と思想的、心情的に水と油であろう。それだけでなくサンダース大統領を囲む若い民主党議員や官僚たちは安倍政権とは真逆の存在となるはずだ。今、アメリカで進行しているのは政治革命であり、これは1970年代末に始まったレーガン大統領やサッチャー首相による保守革命を転覆させる左からの革命である。
このインパクトを考えると、トランプ大統領とゴルフを楽しんできた安倍首相はアメリカに行きたくなくなるだろう。国連総会ですら欠席するかもしれない。これまで憲法9条の改憲の圧力はアメリカから来ていたが、その流れが今年、止まる可能性がある。さらにサンダース大統領の風は一過性のブームにとどまらず、ネオリベラリズムが40年間続いたのと同様に、数十年続く政治革命となっていく可能性が高い。というのも、野放しになった資本主義はそれ自体の資本の運動の帰結として格差が限界まで膨れ上がり、このままでは今世紀中にシステム全体が崩壊する、という見方が高まっているからだ。資本主義を修復しなければ全体が沈没する、という分析があるのである。サンダース候補自体は78歳と高齢だが、民主党の若手に民主社会主義を推進する議員が活気づいており、米民主党を根底から変えつつあるのだ。というより、ルーズベルト大統領の時代の労働者の党だった本流に戻しつつあると言った方がよいのかもしれない。この政治革命が数十年続くであろう、というのはラティノ系を含む若手議員たちがサンダース候補支持を打ち出して民主党予備選を支えていると言うことである。彼らが次の米国の50年間を作るのである。
だが、果たしてほとんど独裁者となった安倍首相が、そうした世界の現実を受け入れることができるかどうかはわからない。サンダース大統領に対してもトランプ大統領の時と同様に、安倍首相は忠犬のような笑顔を浮かべることができるだろうか。むしろ、日本は1941年のように再び世界から孤立していく可能性がある。鎖国の日本の中で、英語は敵性言語として使用禁止となり、アベノミクス実現に向けた「30年闘争」が「自力更生」というスローガンとともに続いていくことになるかもしれない。その頃にはマスメディアもなくなっているだろう。皮肉にも同盟国のなくなった日本には集団的自衛権はもう必要ない。
南田望洋
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