2020年03月11日23時27分掲載  無料記事
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検証・メディア

NHKの自主自律の破壊者に成り下がった森下俊三氏の経営委員辞任を要求する  澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士

私は、何度もここNHK視聴者部に足を運んで、もの申して来た。決して、個人としての主観的見解を述べに来たのではない。主権者国民の一人として、知る権利を共有する者の代表の一人として意見を述べてきたつもりである。しかし、真摯に耳を傾けてもらったという手応えはない。事態は、どんどん悪化してきている。 
 
私たちの見解の基調はNHKに対する攻撃ではない。あるべき公共放送の主体として、自主自律の姿勢を堅持していただきたいということだ。そのような意気込みをもって番組の制作にあたっているスタッフがおり、よい番組も作られてはいる。ところが、その現場の良心を潰そうというNHKの上層部や、経営委員会がある。私たちは、権力と結託したこのNHK上層部や、経営委員会のありかたを強く批判している。 
 
かつて、NHKは大本営発表の伝声管に過ぎなかった。その負の歴史を徹底して反省し、清算するところから戦後のNHKは再発足した。その理念の根幹には、権力からの干渉を排するジャーナリズム本来の精神がある。権力におもねることのない、自主・自律の精神を貫いてこそ、NHKは国民・視聴者の信頼を得ることが可能となり、そうであってこそ公共放送として存立の意味がある。ところが、今NHKに対する国民の信頼は地に落ちている。公共放送として存立の意味が、危うくなっている。 
 
失われた信頼を回復するためには、国民・視聴者の目に見える形での反省が必要だ。そのために必要不可欠で、しかも最も効果的な具体策が、森下俊三・経営委員会委員長の辞任である。委員長辞任だけでは不十分だ。私たちは、主権者国民を代表する者として、直ちに同氏の経営委員辞任を強く求める。 
 
・・・・ 
2020年3月9日 
 
NHK経営委員長 森下俊三 様 
同  経営委員各位 
 
NHKの自主自律の破壊者に成り下がった森下俊三氏の経営委員辞任を要求する 
「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11. 5 シンポジウム」実行委員会 
世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 
 
森下俊三NHK経営委員長はNHKの「かんぽ」関連番組の制作をめぐる私たちの度重なる質問に対し、「個別の番組制作について言及したり、干渉したりした事実はない」と言い続けてきた。しかし、全国紙の取材報道等で、このような回答は虚偽であることが明らかになった。 
森下氏をはじめ、複数の経営委員は上田良一会長(当時)の面前で「番組の作り方が問題だ、番組の取材は稚拙で、取材行為がない」などと、激しく非難した。しかも、それは事実に反する非難だった。経営委員が個別の番組の編集に干渉することを禁じた「放送法」第32条を、これほどあからさまに踏みにじるのは前代未聞の行為である。 
そもそも、高齢者らを食い物にした悪徳商法の当事者からのクレームを取り継ぎ、彼らの意向にそって番組制作に口出しするのは、NHKの自主自律を経営委員長自らが蹂躙する行為である。 
さらに、森下委員長は3月5日の衆議院委員会質疑で、前記のような発言をしたことを認めながら、その時のやり取りを記録した経営委員会議事録の公開を拒否した。公開することによって委員会の業務の遂行に支障が出ると委員会が判断した場合は、議事録を非公開にできるという内規を盾にしたものだった。しかし、こうした対応は内規を放送法の上に置き、放送法が義務付けた情報公開を骨抜きにするものであり、とうてい許されない。 
 
申し入れ 
以上から、私たちは、次の3点を森下俊三経営委員長ならびに経営委員会に要求する。 
 
1.複数の経営委員が個別の番組の編集に干渉する発言をしたと言われている2018年10月23日の経営委員会の議事録(議事概要ではなく発言者の氏名、発言の内容を記した議事録)を全面公開すること。 
2.NHKの自主自律、番組編集の自由、NHKの経営を透明なものにするための情報公開の趣旨を定めた「放送法」を理解する意思と能力を持ち合わせていないと判断するほかない森下俊三氏は、経営委員長はもとより、経営委員の職も自ら、直ちに辞すること。 
3.経営委員会は上田良一会長(当時)に対する謂れのない厳重注意を直ちに取り消すこと。 
 
以上 
 
・・・ 
 
2020年3月9日 
 
NHK監査委員会 御中 
 
森下経営委員長ほか経営委員会のコンプライアンス違反の疑義について厳正な監査と対処を要請します 
「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11. 5 シンポジウム」実行委員会 
 
世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 
 
目下、森下俊三NHK経営委員長ほか数名の経営委員が、NHKの「かんぽ」関連番組をめぐって「放送法」に違反する疑いが濃厚な発言をしていたことが報道や国会で大きく取り上げられています。 
私たちもこの問題を重視し、二度にわたって経営委員会に質問書を提出しましたが、その都度、経営委員会からは、「個別の番組制作について言及したり、干渉したりした事実はない」という、誠意のない全面否定の回答が届きました。 
ところが、3月5日の国会質疑の場で、森下氏は「放送法」に違反する疑いが濃厚な発言をした事実を認めました。これは私たちへの回答が虚偽であったことを意味します。 
また、経営委員会は2018年10月23日開催の経営委員会会合において、上田良一会長(当時。以下、同じ)にガバナンス上の重大な問題があったとして「厳重注意」をしました。 
しかし、経営委員会が約1年経ってから公表したその日の会合の「議事概要」には、会長陪席の下、監査委員会から、協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められない旨の報告があったと記され、上田会長は、こうした監査委員会の報告も引いて、当初は厳重注意に異議を唱えていた、と伝えられています。私たちは、こうした経過にも重大な関心を持っています。 
そこで、私たちは本日、森下経営委員長ならびに経営委員会宛てに改めて同封別紙のような質問書を提出しますが、それとあわせて、貴委員会に対し、以下のような申し入れをいたします。 
貴委員会がこの申し入れに応えて、真摯な監査をされ、その結果をNHK内外に公表されることによって、失墜したNHKの信頼回復に尽力くださるよう強く要望します。 
 
申し入れ 
1.「放送法」第43条〜第46条、「日本放送協会定款」第26条〜第28条、「監査委員会規程」第4条第2項の定めにもとづき、NHKのかんぽ報道をめぐる森下経営委員長ほか経営委員の言動に、法令・定款(注)に違反する点がなかったかどうかを厳正に調査して、その結果を公表すること。 
(注) ここでは、「放送法」第4条(放送番組編集に対する法的権限を持たない者の干渉の禁止)、第32条(個別の放送番組の編集その他の協会の業務に対する経営委員の関与の禁止)、第41条(議事録の公表)ならびに「経営委員会委員の服務に関する準則」第2条(服務基準)、第4条(忠実義務)、第5条(信用失墜行為の禁止) 
 
2.経営委員会が上田会長に対して「厳重注意」をした際の委員会の手続きは適正だったか、「厳重注意」は合理的な根拠にもとづくものだったかどうかを監査し、その結果を公表すること。 
 
以上 
 
 
澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士 
 
 
(2020年3月10日) 
 
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.3.10より許可を得て転載 
 
http://article9.jp/wordpress/?p=14459 
 
ちきゅう座から転載 


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