2020年03月27日23時28分掲載  無料記事
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検証・メディア

ほんとにそうなの? 「穏健派」のバイデンと「急進左派」のサンダース  Bark at Illusions

 今年行われる予定の米国の大統領選挙に向けた民主党の候補者指名争いは、ジョー・バイデン元副大統領とバーニー・サンダース上院議員に絞られた。マスメディアではバイデンは「穏健派」、サンダースは「急進左派」などと称されているが、こうした評価は適切なのだろうか。 
 
 「急進左派」と呼ばれるバーニー・サンダースの公約としてメディアで頻繁に取り上げられるのは、国民皆保険制度の導入と高等教育の無償化、それに学生ローンの免除だろう。 
 例えば、 
 
「サンダース氏が大統領選に挑むのは16年に続いて2回目。公的な国民皆保険の実現や公立大学の授業料無償化など急進的な主張だが、若者を中心に熱狂的な支持を集める」(朝日20/3/5) 
 
「サンダース氏は徹底的な頑固者の政治家として通る。……『民主社会主義』を掲げて格差是正や国民皆保険、学資ローンの支払い免除などの過激な政策を一貫して主張する」(日経20/2/8) 
 
 しかし国民皆保険制度は経済協力開発機構(OECD)に加盟するほとんどの国家で採用されているし、高等教育の無償化についてもOECD加盟国の約半数で大学の授業料が無償になっている。つまり国民皆保険制度や高等教育の無償化は、「先進国」と呼ばれている国家ではごく当たり前の制度であり、世界一裕福な国家である米国が採用できないような「急進的」な制度ではない。 
 学生ローンについては、その総額は約1兆6000億ドルに上るらしいが、現在 の新型コロナウィルス感染拡大の危機に際して、米国の連邦準備制度(FRS)は急落する株式市場を支えるために、今月12日と13日のたった2日間だけで同規模の1兆5000億ドルを投入している。リーマンショックの時もそうだったが、大企業や富裕層を救済するためなら躊躇することなく莫大な金を投じることができるのに、なぜ学生ローンに苦しむ一般庶民を救済するとなると「過激な政策」と言われなければならないのか。 
 
 一方、「穏健派」のジョー・バイデン。内政ではクリントン政権下の1994年に「暴力犯罪抑制および法執行法」を起草して有色人種の大量投獄の原因を作り、外交面では「国益」に関わるなら軍事攻撃も辞さないとの言葉通り、他に問題を解決する手段があったにもかかわらずコソボやアフガニスタン、イラク、リビアへの軍事攻撃を支持──つまり国際法違反を支持──してきた経歴からすると、彼が「穏健派」だとはとても思えない。しかし社会保障費削減を40年間訴え続け(ライアン・グリム、インターセプト、20/1/13)、バーニー・サンダースの提唱する国民皆保険制度の導入やグラス・スティーガル法(銀行の健全性を保つために銀行業務と証券業務の兼業を禁ずる)の復活に反対するなど、民間保険会社や銀行などの利益を脅かす心配がないから、バイデンは「穏健派」と呼ばれるのだろう。 
 
 「穏健派」だとか「急進左派」だとか、結局は大企業や富裕層などの特権階級から見た基準でそのように呼ばれている。 


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