2020年04月12日10時33分掲載
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コラム
安倍政権の日本はまだまだ下げシロがある 〜「日本を取り戻す」から「日本から解放する」へ〜
安倍首相批判のツイッターの書き込みを見ていると、「日本はもう先進国じゃない」とか、「日本はもう経済大国じゃない」とか、「中国や韓国に追い抜かれた」といった言葉が頻出している。気持ちは理解できる。しかし、そういった言葉の裏にはアジアでいち早く発展し、西欧列強に仲間入りして植民地を作ってきた日本の特殊な優越感が透けて見える。そして、その歪みが当人に自覚できていないように思える。
日本では民主国家となった戦後においても長い間、日本は経済で世界2位の優等生、アジアのNO1といった教育が続けられてきた。日教組は左翼だと安倍首相は批判するが、戦後一貫して日本の教育の底流にあるものはナショナリズムだった。それゆえ、「アジアの1位」とか「世界2位」という自意識から逃れられない。50代のネトウヨの原点がここにある。それが極右運動を支えるばかりでなく、左派の人々の意識の深層にも潜んでいるのだ。そのイデオロギーが実態に合わなくなった今、人々の焦りやいらだちを呼び覚ましている。自然体の自己を直視することができない。1位であるとかないとかは、本当に大切なことなのか。誤った価値観、誤った優越感を子供時代に叩き込まれると一生それに呪縛されて幸せになれない。日本のGDPの順位がどうといった外在的なことでしか、自己の価値を実感することができなくなってしまう。
安倍政権があと5年、10年続けばもっと経済が下降し、アジアにおける地位も下がっていく可能性が高い(※)。まだまだ下げシロは大きい。ネパールくらいの経済レベルまで下降してみれば途上国に生きることがどういうことか身をもって理解できるようになるだろう。もしかしたら、その時、初めて日本人がアジアの人々と真の意味で連帯できる芽が生まれるかもしれないのだ。日本=ナンバーワンという意識がある限り、それは不可能だ。優越感をとことんまで粉砕し、経済レベルを究極まで押し下げてくれるのが安倍政権であると思う。日本人は自らその指導者を持つ政党を選んだ。それは右翼も左翼もひっくるめて、プレッシャーを押し付ける偉大な「日本」という集団幻想から解放されたい日本人の深層に潜む欲望かもしれないのだ。「日本を取り戻す」で政権を奪還した安倍首相の未来は、おそらく「日本から解放する」だろう。
※韓国に1人当たりGDPや労働生産性で追い抜かれた日本の行く末
https://diamond.jp/articles/-/229993
※ここがダメだよ、ニッポンの経営〜なぜ日本の1人当たりGDPは低いのか〜
https://blog.global.fujitsu.com/jp/2016-06-02/01/
「GDP順位を先進国で見ると1位が米国、2位が日本、次いでドイツ、イギリス、フランスと続きます。この順位にほぼ100%相関関係があるのは"人口"なんです。日本の人口は約1億2700万人。先進国で1億人以上の人口がいるのは米国と日本だけです。」
※日本の15歳「読解力」15位に後退 デジタル活用進まず
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/
※男女平等ランキング、日本は過去最低に 中国、韓国、UAEより下
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/121700969/
※報道自由度、日本67位 国境なき記者団、前年同様
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43917270Y9A410C1000000/
武者小路龍児
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