2020年04月14日21時34分掲載
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医療/健康
【たんぽぽ舎発】新型コロナウィルス感染に脆弱な日本の保健医療構造 日本の保健所は半数となった
日本のコロナ対応は、いよいよ医療崩壊に過程に踏み込みつつある。新聞、テレビではコロナ対応の現場に司令塔ともいえる保健所の切迫した状況を伝えているが、なぜそうなったかについては報道しない。以下たんぽぽ舎が発行するメルマガ4月14日号で平宮康広さんによる地域での現実を踏まえた論考を紹介する。(大野和興)
新型コロナに立ち向かえる保健所を増やせ、看護士を増やせ
平宮康広(信州大学工学部元講師)
◎ 1992年の日本の保健所数は852で、2019年の日本の保健所数は
472である。すなわち、約27年で45パーセント以上の保健所が削減された。僕が住んでいる富山県には、保健所と称する施設がひとしかない。設置主体は富山市である。472の保健所は、「保健センター」や「厚生センター」と称するものも含んでいるが、それら「保健所」の設置主体は富山県である。
「厚生センター」等は、おおむね各広域行政圏にひとつの割合で存在し、面積の広い広域行政圏ではふたつの場合もある。同一県であっても、設置主体が異なれば、運営の形態も異なると考えられ、富山県の保健行政は混乱しているように思う。
だが、石川県や福井県の形態も同様で、京都府や滋賀県も同様である。
したがって、日本のPCR検査件数の少なさは政策の失敗により生じた構造上の問題である、と考える。
◎ ちなみに、東京23区は各区に保健所があり、設置主体は区である。すなわち、知事が無能でも区長が有能ならPCR検査等を実施できる体制が整っている。
東京都は、オリンピックを開催するためにPCR検査を抑制して感染者数を少なく見せようとしたかもしれないが、オリンピック開催を延期した後、各保健所のPCR検査件数が急増したように思う。東京都の感染者数が他道府県より突出して多いのは、PCR検査件数が他道府県より多いためかもしれない。
◎ 東京都の感染者数は2000人を超えると予想できる。東京都を基準にすれば、日本の感染者数は2万人を超えるかもしれない。
だが、昨年秋、厚労省は全国424の公立および公的病院に再編統廃合を要求し、他方、安倍内閣は全国13万病床の削減を決定して今も撤回していない。
おそらく、厚労省は公立および公的病院を保健所と同様にするつもりでいる。そのため、公立および公的病院に勤務する医師や看護師の数が減少したように思う。
だが、新型コロナウィルス感染者が一般社団法人化した病院に
入院する場面は稀である。したがって、日本の感染者数に対する回復者数=退院数の割合が12%強で、他方、韓国が68%強なのは、PCR検査件数同様、政策の失敗により生じた構造上の問題である、と考える。
◎ それにしても、野党の国会質問にはがっかりする。市が設置主体の「保健所を増やせ」、「13万病床削減を撤回しろ」、「ベッドを増やせ」と言えないのか。
※関連記事
PCR検査すでに限界 都内感染最多の世田谷 電話相談 倍以上に
指定外来 空きなく 1日2万件のPCR検査(政府発表)は難しい。
新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査が追いつかない。感染者が東京都内で最も多い世田谷区では、保健所の相談窓口に電話が殺到し、相談すら難しい状態だ。
世田谷保健所は急きょ13日から回線を倍に増やしたが、すぐ検査が増えるわけではないという。検査が進まない要因を探った。(中略)
検査しようにも、必要な検体の採取が追いつかないのだ。採取は、指定された医療機関「帰国者・接触者外来」に限られる。病院は非公表で、相談を受けた保健所が外来を紹介する。(中略)
今月初めの時点で、ドイツやイタリアの人口1000人当たりの検査数はいずれも約15人で、日本の30倍に上る。
(4月14日東京新聞朝刊1面<コロナ緊急事態>より抜粋)
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