2020年04月19日20時40分掲載
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コラム
【秩父の小さな畑と直売所から】葉っぱのお金
近くにある特別支援学校高等部の子どもたちと農作業を一緒にやり、地裁直売所を作って採れたものを並べるようになって3年目に入った。子供たちの成長、農業の教育力、地域とのふれあい等々、その折々の報告します。今回は「葉っぱのお金」、朝一番に訪れた小さい女の子のお話です。(西沢江美子)
「おばあちゃん、これで買える」。今朝の最初のお客さんは小さな女の子;さし出した手には落ちたばかりの椿の葉。「買えるよ。それキツネさんのお金だものね」「だよね。ママがダメっていうの。あとでお金もってくるからって」。
新型コロナウイルスで学校はお休み。ママとパパは職場へ。三歳の女の子は、この異常な空気に誰かと話がしたかったのか。話のきっかけを作りたくて、ふとみたらそこに小さい小さいお店があった。毎朝「いってらっしゃい」といってくれる私を見つけたのだ。小さな女の子は、直売所に手ぶらでいけないと思ったのか、新しい葉のために落ちたばかりの椿の葉に気が付いた。それを一葉ひろってお金にすることにしたのだ。
「どうして葉っぱのお金、考えたの」「ちょっと前、保育園の先生が本読んでくれた。それとバアバとキツネの葉っぱごっこしたことあるから」「よし。私とあなただけの買い物ね。そのお金で今日はナバナを一束お買い上げ。ママが帰ってきたら食べてね」
三年目に入った、埼玉県秩父特別支援学校高等部農園芸班の生徒たちが作る野菜の直売所の4月のある朝のこと。支援学校の職員でもなく地域に役員でもない、全くボランティアの直売所のお客さんは、こんな子どもたちまでなんだ。身が引き締まり、同時に暖かい思いがわいてきた。
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