2020年04月27日08時04分掲載
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コラム
2020年 最悪のシナリオ5 政府が大量レイプや恣意的な逮捕・殺害を始めたらどうするか?
2020年は激動の1年に向かっていて、「2020年最悪のシナリオ」シリーズを書いた2月ごろには予想もつかない展開になっています。たとえばサンダース候補が逆転されて撤退したということもあります。今も、よく読まれているのは自衛隊がクーデターを起こす、という奇想天外なもので、奇想天外でも読まれている理由は現政権による閉塞感がそれくらい強く、しかもどうしようもない、という絶望感、無力感が日本にあふれているからだと思えます。
そこで今回は、シナリオというよりも、大学の講義でよくやる想定問答を考えてみたいと思います。問いは現政権とは離れて抽象的なケースを考えてみたいです。もし、政権が官僚機構を完全に支配し、警察機構ももちろん徹底支配し、さらに司法システムを支配し、国会を閉鎖した場合を考えてください。つまり、三権分立という民主主義の基本原則が失われ、行政府の独裁が始まった場合です。そして極論ですが(大学の想定問答はしばしば極論を考えるものです)、政府が批判的なジャーナリストや政治家を逮捕したり、殺害したりし始めた時。あるいは政権寄りの人々による女性の集団的なレイプや性的なハラスメントが無制限に行われても警察機構がまったく関知しない場合。また、恣意的な逮捕や殺害が各地で行われた時。ネットのブロガーや、一部の勇気ある新聞やテレビがこれを報じたとしても、警察も司法も関知しなければ、そして国会でも追及できなければ、国民にどんな可能性が残されているのでしょうか。
極論と書きましたが、人類の歴史を振り返ると、こうしたことは繰り返し起きていることです。1990年代に旧ユーゴスラビア(※)でそうしたことが起きましたし、ルワンダの民族紛争(※)でもそうでしょう。日本は1945年の敗戦と占領統治、そして日本国憲法による戦後民主主義の時代を経て、今、その枠組みが溶融し始めています。もしここで政権が三権分立を反故にして、次第に何でもやり放題になって行った場合、いったい国民はどこまで我慢するのでしょうか?近代の政治哲学では抵抗権として、主権者の信託を裏切る行政が行われた場合は新しい政府を作ってよいことになっています。では、日本国憲法のもと、その憲法が力づくで反故にされたような状況で行政府がやりたい放題になった場合、日本国民は抵抗権の行使を許されるのでしょうか?その場合は、具体的にどのようにして新政府を設立するのでしょうか? これが「暫定政府」であれば、そこからどのような流れと手続きで、平時に移行するための総選挙へとつなげるか。
過去の歴史には様々なケースがあります。1945年のイタリアで独裁者のムッソリーニが殺害された時。1989年にルーマニアの独裁者だったチャウセスク夫妻が処刑された時。あるいは、東独のホーネッカーの逮捕のケース。これらはいずれも行政府のトップだった政治家たちが力づくで引きずりおろされたケースです。韓国の朴槿恵の場合は、まだ民主主義運動の力が韓国に残っていたため、朴槿恵は最終的に逮捕されましたが、流血の事態は避けることができました。
今、「戦後」の新しい事態が起きているだけに、新しい想定を政治学者も憲法学者も法律学者も行って国民に示してもらいたいと思います。
※コソボ紛争後20年で声を上げはじめたレイプ被害者たち(クーリエ・ジャポン 2019年)
https://courrier.jp/news/archives/157663/
「コソボ紛争のさなかでセルビア人兵士たちからレイプされたアルバニア人女性たちが2万人いるとコソボ政府は見積もっている。セルビア側はその数を疑問視している。EU加盟には両者の関係改善が条件だ」
※ルワンダの80万人大虐殺から23年 25万人がレイプされ、産まれてきた子供2万人の「いま」(クーリエ・ジャポン 2017年)
https://courrier.jp/news/archives/95287/
南田望洋
■2020年の最悪のシナリオ 1 自衛隊のクーデターで首相夫妻が日本から放逐される場合
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