2020年05月12日00時38分掲載
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コラム
2020年の最悪のシナリオ 6 安倍首相がテロリストに誘拐されて国民一人当たり10万円の身代金カンパを要求されたら?
2020年の最悪のシナリオでは、自衛隊がクーデターを起こした場合の想定とか、政府が犯罪をやりたい放題になった場合とか、いろんなとんでもない想定をして、そうなったらどうなるかを多少なりとも想像している。海外における政治や防衛の学習ではこうしたとんでもない想定も除外しない。
今回は安倍首相がテロリストに誘拐された場合だ。テロリストは何者か特定できないまま、安倍首相不在の状態が続き、やがて、1つのメッセージがYouTubeで届く。そこには縛られた安倍首相が映し出されており、安倍氏は「日本国民の皆さんが一人あたり10万円のお金を寄付してくれれば身代金が払えます」と言わされるのである。それはテロリスト史上でも莫大な身代金だろうが、日本政府が国民一人当たり10万円を支給することを前提にした要求と解釈されるだろう。犯人は日本政府のまとまった身代金ではなく、国民一人一人が6月末日までに10万円ATMから振り込むことを求めているのだ。1日でも遅れたら、始末する、と。果たして、この場合、日本人は受け取る(であろう)なけなしの10万円を首相の命のために寄付するだろうか。いや、そもそも10万円の振り込みがそれ以前に行われているのだろうか。未だにあのマスクですら届いていないのだ。
こうした場合に、小泉元首相なら「テロとは妥協しない」と言って、交渉は断固として拒絶し、安倍首相が斬首されるにまかせたかもしれない。安倍首相のもとでも、二人の日本人が中東で斬首された。では、日本国民は首相が誘拐されるという前代未聞のこの場合、どう行動するだろうか。いかに独裁的な政治家であっても、日本の首相が誘拐されて殺されるのを見殺しに出来るだろうか。この問いは2013年の第二次安倍政権発足以来、日本を二分してきた政治の空気を再び、揺り動かすかもしれない。つまり、いかに独裁的な政治を行っていたとしても、日本人が一人、みすみす殺されるのを黙って見殺しにしてよいのか、ということであろう。だが、ひとたびそう考えてみて、いかに多くの日本人が新型コロナウイルスであれ、金融バブル崩壊であれ、みすみす死ぬのを見殺しにされてきたかに思い当って唖然とするのである。
南田望洋
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