2020年05月28日16時55分掲載  無料記事
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政治

東京都知事選は日本の未来を分ける選挙になるだろう〜問われる野党共闘の真価〜

  2014年と言えば日本が戦後初めてファシズムに転換した年であると以前、書きました。この年に何が起きたかと言えば内閣人事局が設置され、内閣が人事を通して官僚を支配することが可能になったことと(これが検察トップの人事問題にもつながっている)、さらにNHKの安倍首相べったり報道の甲斐もあり、安倍政権が長期政権になる土台となった年でした。この節目となる2014年の幕開けを飾ったのが1月公示の東京都知事選です。この時、野党支持者や浮動票の票が細川護熙元総理と宇都宮健児に割れ、安倍首相が率いる与党の自公が推薦した舛添要一元厚労相が選出される結果となりました。 
 
  自民党と公明党だけでは過半数の票が集められないとしても、野党が分裂した結果、安倍政権は無敵だと日本の官僚たちは理解したはずです。都知事選、内閣人事局の設置、秋の選挙での安倍首相らの大勝で長期政権になる・・・このことが霞が関の人々の心理をわしづかみしたのではないかと思います。統計データの改竄、公文書の改竄や廃棄、犯罪の不起訴など、2014年の政治がもたらした悪影響は全領域に及んでいます。そればかりか民主制の基本となる三権分立すら首の皮一枚の危機にあります。あれから6年が経ち、また都知事選がこの夏行われます。2014年の再来となるか、新しい政治が生まれるかの分岐点となる重要な選挙となるでしょう。 
 
  2014年と2020年の最大の違いは野党共闘路線が生まれていることです。野党共闘を最初に提案したのは日本共産党の志位委員長でした。2014年の都知事選の時、日本共産党が細川氏を推していれば細川氏が当選できた可能性は高かったのです。そのため、宇都宮氏の方が個人的には細川氏よりも好きだ、という人であっても選挙で勝つことを考えると、共産党が野党の足並みを崩している、と批判していた人がたくさんいたものです。のちに日本共産党の幹部にこのことを問うと、日本共産党が共闘するのは政策の一致が前提となる、ということでした。ですから、野党共闘も単なる数合わせではなく、政策の合意が前提であり、市民連合が間に入って合意できる政策を作ってきました。 
 
  このことから、今年の選挙で野党協力があったとしても、政策で合意できるかどうかが重要です。その意味で、今日、日本共産党の志位和夫委員長が宇都宮健児氏の都知事選出馬に関して発したツイートは興味深いものがあります。 
 
志位和夫衆委員長のツイートから 
「●政治姿勢と基本政策は方向性を共有できます。宇都宮さんの出馬表明を歓迎します。今後のたたかいについて、よく話し合っていきたい。 
●野党が統一候補を立てることは党首間での合意です。野党共闘でたたかう体制をつくるために努力したい。」 
 
  日本共産党、立憲民主党や国民民主党、社民党などの野党が政策合意できれば、宇都宮健児候補を野党統一候補にすることができるでしょう。その意味では宇都宮氏が旧民主党系と政策合意できるかどうかが、重要になるかもしれません。志位氏が書いているように、野党統一候補を立てることが合意だとしたら、誰が出てくるにしても野党間の合意が可能な選挙公約をする必要があります。もし、都知事選で野党共闘が成立して、野党統一候補が勝利できれば日本の政治の軌道を変える重要な節目になることは間違いありません。2014年に政治に絶望した人々に希望を与えたのが2015年の野党共闘の萌芽と市民連合の立ち上げだったと思います。2014年の失敗の繰り返しにならないことを祈っています。 
 
 2016年の都知事選では野党共闘が鳥越俊太郎氏を推薦し、小池百合子候補陣営と闘いましたが、この時、野党共闘は統一候補選びに時間がかかってギリギリになったばかりでなく、鳥越候補者も都政に関する具体的政策を今一つ打ち出すことができませんでした。一方で小池氏は実現可能性はともかく、都政をこうしようという項目をたくさん並べて見せました。小池氏の勝因はマスメディアが小池氏を自民党と闘う正義のマドンナに仕立てたことにあると思います。2016年夏の選挙では、まるで小池氏をヒロインにしたヒューマン・ドキュメンタリー番組のナレーションを構成作家が書いたような報道があふれていました。自民党を推す保守勢力は自民党への不満票をイデオロギー的に近い維新の会や、自民党議員だった時代もある小池氏などに回収させる手法を取り、マスメディアがそのストーリーを増幅させています。今回も新型コロナウイルス対策への安倍政権への不満を、ヒロインに仕立てた小池候補(現職)に回収させる報道が繰り返される可能性があると思います。一方で、キャスターだから集票できるだろうとか、具体的な政策がないから統一候補にしやすいといった理由で野党統一候補が擁立されたら三度失敗を繰り返すでしょう。 
 
 
 
※宇都宮健児氏に「距離」取る野党 一方の当人は「今回はどういう候補が出ても降りない」(JCASTニュース) 
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7f00aba1950671048e4e00abf0470d0c7149f34 
 「元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(73)は16年の都知事選で、旧民進党が野党統一候補として擁立を進めた鳥越俊太郎氏(80)に譲る形で、告示の1日前に立候補を断念した経緯がある。宇都宮氏は20年5月27日に東京都庁で開いた記者会見で「今回は、どういう候補が出てきても、降りるつもりはない」と断言した。だが、立憲民主党をはじめとする野党は、宇都宮氏の支援の是非を含めて、方針を固めきれていない。」 
 
※鳥越さん、なぜ惨敗? 3つの理由 無党派・統一候補…全部裏目に(withnews) 
https://withnews.jp/article/f0160801003qqf2160801000qqF0G00110101qq000013797A 
 
 
村上良太 
 
 
■【編集長妄言】都知事選に思う いま肝心なのは反ファシズムの幅広い陣形づくりだと思うのだが 大野和興 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401222130123 
 
■野党共闘を考える 共産党幹部・植木俊雄氏に聞く 共産党はどのように共闘を決め、どのように進めてきたのか その1 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711182057166 
■野党共闘を考える 共産党幹部・植木俊雄氏に聞く 共産党はどのように共闘を決め、どのように進めてきたのか その2 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711182139086 
■野党共闘を考える 市民連合の中野晃一教授(上智大学)に聞く その1 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711080022143 
■野党共闘を考える 市民連合の中野晃一教授(上智大学)に聞く その2 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201711080111133 


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