2020年06月02日12時47分掲載  無料記事
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米国

黒人を殺したミネアポリスの白人警官の妻、離婚を求める 英紙などの報道では妻はラオスからの難民でミネソタ美人妻コンテスト優勝者

  ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人殺しはSNSでその現場のシーンが世界的に大量に拡散されるにつれ、全米で抗議の渦を巻き起こし、暴動にまで発展しています。一方で、白人警官の家庭に関する報道も地元でされており、この事件はアメリカの現代史を象徴する何かを感じさせます。 
 
  前に書きましたが、白人警官の妻がすぐに離婚を申し出たという記事が複数出ていて、その妻と言うのはアジア系だそうです。もっと細かく見ると、ラオス難民とされ、ということは恐らくはベトナム戦争に続く米国が軍事作戦を取り、猛爆撃したインドシナ戦争で難民となって渡米した人々の一人あるいは家族の出ではないか、と思われます。彼女は不動産業を営んでいるとされ、フロリダに夫と別宅があるとの報道もあります。ミセス・ミネソタ(ミネソタ美人妻)コンテストの優勝者でもあり、今回の事件については殺された黒人の家族に弁護士を通して哀悼の意を表しています。 
 
※デイリー・メイル紙(英) 
https://www.dailymail.co.uk/news/article-8371633/Wife-Minneapolis-cop-Derek-Chauvin-files-DIVORCE-day-hes-charged-George-Floyds-murder.html 
※AP 
https://apnews.com/69beaad97dcea2dce6c2184e0f5b5e4e 
  有色人種の中で日本人は最近あまり意識しなくなっていましたが、昔はしばしば「黄色人種」であると言われたものです。そして、白人と黒人の「間に」位置するような序列意識がどこかで存在していました。これは歴史的に形成された意識で、多分、19世紀の日本開国まではなかった意識、あるいは劣等感だと思います。 
 
  このラオス系妻の報道に接して思い出したのは黒人を被写体にして活躍してきたフォトジャーナリスト、吉田ルイ子氏(※)が書いていたあるエピソードでした。彼女はアメリカの公民権運動たけなわの頃、ニューヨークで暮らしており、当初は白人男性と結婚していたそうです。この白人男性はリベラル派だったそうですが、公民権運動で黒人と白人の対立が激化した時、ちょっとしたはずみで、黒人を差別する発言をしてしまったそうです。その言葉にひどく失望し、結局はこれが決定打となって離婚に発展したといったエピソードでした。今回の事件では妻はラオス系アメリカ人であり、類似性を感じてしまったのです。 
 
  正直なところ、このアジア系の妻と白人警官の夫婦関係まで細かくわかりませんが、単純ではない愛憎があるのでしょうし、そこにこうした人種をめぐる事件が波紋を投げかけたことは、アメリカ全土で様々な家庭でも、いろんな形で波紋を投げかけているのだろうと感じさせられます。 
 
  ちなみに、吉田ルイ子氏の著書には以下のようなものがあります。「ハーレムの熱い日々」(1979)「ぼくの肌は黒い」(1978)「吉田ルイ子のアメリカ」(1987)、「南ア・アパルトヘイト共和国」(1989)、「華齢な女たち」(2001)。どれも日本では新しい世界で、素晴らしい本です。吉田氏がデビューした頃、フォトジャーナリストという言葉がおそらく初めて日本で使われ始めたのだと思います。つまり写真だけ撮影する人ではなく、またペンで書くだけではなく、写真を撮影し、文章も書く、というジャーナリストです。その吉田氏が最初に選んだ被写体がニューヨークのハーレムの黒人たちの生で、彼女の現地の人々への入り込み方が日本で感銘を与えたのでした。「人種差別反対」というスローガンを越えた、生な生活、生な声に肉薄していたからです。先ほどの自分の生き方をめぐる文章もそうですが、黒人を描く中にアジア人である自分自身の思いや葛藤を反映させる形で表現していた、そのことがスローガンではない迫力を生んでいたのだと思います。 
 
 
■白人警官による黒人の殺人、暴動と米大統領選 〜人種対立が深まると優位に立てる共和党〜 2012年夏の右翼の尖閣諸島上陸と自民党の復活を想起 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005292101555 
■ミネアポリスの警官による黒人の殺害、暴動 そしてバイデン大統領候補の声明 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005311405150 
■ミネアポリスで黒人が警察官に衆人環視の中、殺される 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005291518325 
■警官による在日クルド人の扱いと都知事選 そしてミネアポリス 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005302105156 


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