2020年06月11日23時42分掲載  無料記事
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中国

香港への国家安全法導入反対 国際連帯求める集会

 中国の香港に対する同化政策とも言える動きに歯止めがかからない。中国は、先月末に行われた全国人民代表大会(全人代)で「国家安全法」の香港への導入を決定した。香港は、1997年に英国から返還された際、英中共同声明で将来50年間は外交・防衛を除く分野での高度の自治を維持する約束をされているが、今回の国家安全法の導入は「この声明に反するものである」とし、民主化を訴える香港市民らによる大規模なデモなども発生している。 
 
 こうした中、このような香港問題の解決に取り組む「香港問題から国際的連帯を考える有志の会」が9日、国会内で香港国家安全法の導入について考える集会を開催した。集会には、香港民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏や民主派区議の葉錦龍(ヨウ・キンリュウ)氏がオンラインで参加をし、無所属の山尾志桜里衆院議員や日本共産党の笠井亮衆院議員、自民党の中谷元衆院議員などの与野党の国会議員と意見を交わした。 
 
 その際周氏は、「国家安全法は、私たちが元々持っている民主的な権利や一国二制度を完全に破壊するもので、国際社会にとっても影響が大きい」と語り、「中国政府は国際的な交流を一番恐れているため、国際社会が見ているというメッセージを伝えることが大事だ」と述べた。また、葉氏は「国家安全法が成立すると、香港における日本企業の財産も危険にさらされる」と指摘し、香港の日本企業を中国から守る仕組みの必要性を述べた。 
 
 このような香港からの声に山尾議員は、「国会主導で国際問題に向き合えるような仕組みの土台を作る必要がある」とし、中国の姿勢に反対するための国会決議の必要性を語った。また、日本共産党の笠井議員は、「重大な人権侵害は、今日の世界では国際問題である」と、実効性のある対策を超党派の国会議員で議論していく必要性を訴え、これに参加議員も賛同した。 
 
 米国で起こった白人警官による黒人男性への暴行死事件への抗議に多くの市民が集まったように、人権侵害への抗議の声は世界中に広まりつつある。このような潮流を意識してか、安倍総理は10日の衆議院予算委員会で、香港への国家安全法導入について、G7(主要7か国)で「一国二制度」の維持を求める共同声明発出を目指す意向を示しており、これに対し中国政府は即座に、日本へ「重大な懸念」を示している。 
 
 集会で司会を務めたジャーナリストの堀潤氏は、「香港の若者に日本に伝えたいことを尋ねると、経済に負けないでくださいという返答があった」と語っており、中国の経済力に萎縮し、世界の国々が「モノ言えなくなる」ことへの若者の危機感を感じ取ることができる。経済大国として存在感を強める中国に、どのようにして人権の尊重を求めていくのか。日本は先進国として、国際的に協調してこの課題に取り組む責任があると言えるであろう。私たちも他人事ではいられない。 


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