2020年06月12日00時51分掲載
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政治
大手広告代理店とマスメディアと政府 「第四の権力」も独立を
新型コロナウイルスに関する持続化給付金の事業の電通への再委託問題で、大手広告代理店と政府あるいは自民党との関係が改めて問われています。電通が自民党のイメージ戦略にかなり以前から関与していたことが研究者によって論じられていますが、識者の中にはこのこと自体には問題がない、という人もいます。アメリカなどでも広告企業が政党や政治家のイメージ戦略を担当するのは常識だ、と。
しかし、その常識は本当に正しいのでしょうか。よく言われるようにメディアは「第四の権力」です。TVは世論形成に大きな影響力を持っています。そのため、立法、行政、司法の3権力それぞれからメディアは独立していることが求められています。独立している、ということは他の3権力から「圧力」を受けないということです。
今回のケースで言えば、電通が自民党をクライアントとして自社の戦略の提供によってこれまで自民党から報酬を得るという関係を保ってきたのだとすれば、電通が民放に大きな影響力を持ち得ることは、権力分立の観点から見ると、大いに問題があるのではないでしょうか。
代理店であればクライアントを喜ばせたいでしょうから、選挙では一人でも多くの自民党の候補者に当選してもらいたいと思っても無理はありません。今、財政的に厳しい民間の放送局にとってはそうした電通の意向を聞くことがますます重要なことになっている、という可能性はないと言えるのでしょうか。たとえばニュース番組やワイドショー、ドキュメンタリー番組などのテーマ性や文脈においてです。というのもスポンサー企業を束ねているのは電通などの大手広告代理店だからです。
電通が片方で政府あるいは与党に関与し、また一方で、メディアに関与しているとすれば、これでは2つの権力が独立しているとは言えないと思います。ですから、公共性を持つTVの番組に関与する広告代理店は政界とは独立している、というような法律(※)が必要ではないでしょうか。このことは今、日本の民主主義をめぐる大きな問題になっていると思います。
●税金で政党CM
自民・民主とも 100億円超
電通・博報堂が受注トップ (赤旗 2007年)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-06-02/2007060215_01_0.html
●給付金業務、97%を電通に再委託 不透明な769億円(朝日)
https://www.asahi.com/articles/ASN5Y6R35N5YULFA00P.html
※金融と投資の業務の分離を定めたグラス・スティーガル法(銀行業務と証券業務を兼業させず、企業をどちらかに分けた)のように、政党や政治家の広告代理店業務を勤める企業は、TVの広告代理店業務と兼業できないような法律が必要である。現代の民主主義の危機の大きな原因がメディアによるジャーナリズムを逸脱したバイアスのかかった世論誘導にあるからだ。
南田望洋
■TVスポンサー法の制定を 宣伝費を払うかどうかは消費者の権利として まずは表示から
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■TVスポンサー法の制定を 宣伝費を払うかどうかは消費者の権利として まずは表示から 2
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■TVスポンサー法の制定を 3 民放と言えども公共性がある
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