2020年06月16日08時53分掲載
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政治
山本太郎氏の都知事選出馬の記者会見をYouTubeで見た 出馬を決めた決定打は何だったのか?
れいわ新選組代表の山本太郎氏が都知事選に正式立候補を表明し、記者会見を昨日行った。山本氏はそもそも共産党や社民党が推している宇都宮けんじ候補と方向性が近いことから、山本氏が出馬を検討していると以前表明した段階から、その意図を様々に解釈する人々が存在した。
たとえば山本氏は心の底では宇都宮氏を応援しているが、小池票を減らすために自分も出馬の旗を揚げることで小池票を切り崩し、自分はギリギリになって撤退して宇都宮氏に有利にするのではないか、という見方。あるいは、立憲民主党がなかなか宇都宮氏の推薦を決めなかったことから、立憲民主党が独自候補を擁立する機先を制し、立憲民主党が宇都宮候補を支持する方向に誘導するためではないか、などなど。
しかし、昨日の記者会見を見て感じられたのは宇都宮候補支援の陽動作戦にとどまらず、山本氏が本気で都知事選挙に臨んでいることだった。記者会見では様々な動機が語られたので記者によって、その受け止め方にもバラエティがあるだろうが、筆者が最も印象深く感じたのは消費税5%への引き下げを立憲民主党がのめないことが、山本氏が単独で都知事選に立候補をする決め手になったらしいことである。
山本氏は5月下旬に野党陣営から都知事選への立候補の可能性を打診されたという。2回目の打診だったそうだ。しかし、「れいわ新選組公認は取り下げて無所属であることが条件」と言われ、山本氏はそれを呑むかわりの条件の1つとして、次の衆院選挙で<消費税の5%引き下げ>を野党共闘の公約にすることを約束してほしいと申し出た。すると野党側の交渉担当者から都知事選までに党内手続きが間に合わない、と言われた。これはおそらく立憲民主党の担当者だろう。民進党を解体して希望の党への合流を決めた時は一日で党内で合意したのに、どうして5%への引き下げには20日近くかかるのか、と山本氏は皮肉に語った。
(そもそも野党陣営が本気で都知事選に勝つことを考えていたなら、3月や4月にこうした話が出てもおかしくなかったはずだ。その頃なら余裕で党内合意も取り付けられただろう。都知事選の時期は決まっているのだから、山本氏になるかどうかはともかく、野党統一候補者を選ぶ時間がもっと必要だったのではないかという印象が濃い。とはいえ新型コロナウイルスの未知の状況により、なかなか候補者選びも進まなかったことも一因かもしれない。山本氏自身も立候補表明が遅くなったのは新型コロナウイルスの与えた被害を回復させるために、自分の考える都の政策が可能かどうかの財政的な試算で自分が確信が持てるまで時間を要したと言った。※)
このように野党第一党の立憲民主党への不満から、山本氏は国政選挙においても野党共闘とは違った形で、れいわ独自の公約を掲げて単独ででも打って出る可能性があることを明確に示した。その意味では今回の都知事選は地方選挙でありながら、政界再編も含めた、国政の未来がかかった闘いにもなるだろう。
※記者会見で山本太郎氏は事前に宇都宮けんじ氏と3月1日に一度、5月25日にもう一度都知事選立候補に関して二人だけで話をしたと語った。3月の時点では二人とも立候補を検討していたが、まだこの時点で宇都宮氏は出馬を決めていたのではなく、野党統一候補が宇都宮氏も賛成できる人物なら立候補を取り下げる余地もあったようである。二回目の5月下旬の時点で、宇都宮氏は誰が立候補しようと自分は出馬すると決めていたようだと語った。その意味では3月の時点で、宇都宮氏、山本氏、野党共闘陣営で都知事選の話を詰めておく必要があったのではなかろうか。
武者小路龍児
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