2020年09月02日16時43分掲載
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検証・メディア
フランスの政治番組の面白さ 野党党首の特集で2時間枠 〜野党党首に各分野の厳しい論客をかませて1対1で論戦させる〜
フランス人の私の友人たちの多くはTV番組を信頼せず、ほとんど見ていないばかりか、TV自体を持っていない人が少なくありません。それでも外国人の僕からみると面白い番組があるのです。たとえば政治番組で言えば、2017年の大統領選で健闘した左派政党「服従しないフランス」の党首であるジャン=リュク・メランションへの2時間にわたるスタジオ番組が放送されています。
メランションはもともとは社会党議員で、その後、社会党の中道化、あるいは右傾化に反対して飛び出し、左翼党を立ち上げました。今は「服従しないフランス」の党首として、左派政党の一角を占めており、議員の人数以上に、メディアではしばしば発言が取り上げられています。以下のリンクは大統領選のあった2017年の11月にフランスで放送されたらしく、メランションが公共放送局France2の了解をもとにYouTubeにUPしているものです。
https://www.youtube.com/watch?v=uCPuiSWRq8I
この番組ではメランションへの批判的な視座を持つ論客というか各分野の専門家たちが次々と登場して、経済政策や外交など様々に議論を挑んで、それにメランション議員が切り返す、という構成になっています。2017年の大統領選で、もし社会党候補のブノア・アモンが撤退してメランション候補で左派を一本化できていたら、メランションが大統領に当選した可能性もあるのです。しかし、「服従しないフランス」未だ野党の小政党に過ぎません。こうした小政党の党首に大統領と同等の時間を割いて、政治の番組を作るのは日本ではまず考えられません。たとえば日本共産党の志位和夫委員長でNHKが2時間の特集を組む、あるいは「れいわ新選組」の山本太郎党首で2時間の特集を組むという番組が日本のメディアでは考えられないことと同様です。
とはいえ、それが考えられないのは、今まで誰も日本ではそうしたことを考えなかっただけです。やってみると非常に面白い試みになると思います。決してよいしょだけする番組ではなく、正面から批判的な論客をかませていくので、その政治家に反対する人にとっても興味深く見れるはずです。1対1の論戦には与党の閣僚クリストフ・カスタネ―ルも登場しています。たとえばその討論から、政治について多角的に考える素材になりえるだろうからです。ところが、日本では常に首相が持論を長々と語るだけで、野党の党首が話をしたとしてもちょろっと出てくるだけです。そうではなくて、その政策の全貌が見えるくらいに様々な人をぶつけて、話を引き出す、というのはありません。それと、もう一つ、言えることはいろんな人が出てきますが、一度に一人ずつということです。一度にいろんな論客が出てきて混乱させてしまう、ということはありません。
2時間枠ほどの特集番組でなくても、「オンネパクシェ」(France2)というシリーズのスタジオ番組でもしばしば与野党議員が出演して、持論を比較的たっぷりの時間をもらって開陳しています。日本が勝者総取りになっているのとは対照的です。たとえば、以下は2010年にかつて社会党の党首だったリオネル・ジョスパンが出演した時のものです。様々な政党の政治家が出演しています
https://www.youtube.com/watch?v=rYT2Xg-APAU&t=24s
以下は2012年のマリーヌ・ルペンの回。
https://www.youtube.com/watch?v=sJN5CuFjhF8
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