2020年09月12日23時08分掲載
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時代を画す傑作の参考書 「フランス語・動詞宝典」(初・中級編308と中上級編466」(久松健一著)
前にも一度書いたと思うのですが、駿河台出版社から出版された2冊の語学の参考書、「フランス語・動詞宝典」(初・中級編308と中・上級編466」(久松健一著)はフランス語を学ぶ人にとっては時代を画する参考書だと思います。久松健一氏はフランス語の参考書を多数書いていますが、本書が代表作と言っても良いのではないでしょうか。
この2冊がどのようにすごいかと言えば、初・中級編では308の、中・上級編では466の動詞の活用が動詞1つに1ページか2ページの割合で付けられ、さらに重要例文が付してあるのです。スペイン語やイタリア語、そしてフランス語などのラテン語に由来する言語では動詞の活用を覚えることが極めて重要です。英語に比べて、活用が人称や時制や態などによって多様に変化するため、動詞がすらすら出てこないと話すことができないのです。ところが、著者の久松氏も書いているように、かつてフランス語の教育の時間が今よりも長かった(らしい)時代には動詞の活用に特化した講義も組み込まれていたそうです。私が大学の第二外国語でフランス語を学んでいた1980年代半ばには、すでにそのような動詞に特化した講義はありませんでした。文法の教科書に、それぞれの動詞の活用パターンの代表的な動詞がいくつか紹介されているだけで、あとは皆さんでよろしく、というスタンスだったのです。そもそも文法の教科書に登場する動詞も、同じパターンの動詞として一度軽く触れられるだけの動詞も含めてもせいぜい数十くらい。ですから、家で自主的に辞書などを使って動詞の活用を一生懸命やった学生や大学とは別にフランス語の私塾に行った学生は伸びますが、私のようにずぼらできちんとやらなかった学生は全然話せるようにはならないのです。
そのように過去を振り返ってみると、「フランス語・動詞宝典」(初・中級編308と中・上級編466」では、とにかく、800近い動詞の活用表をつけているところが凄いと思います。これによって、今まで「割愛」されて、結果的に生涯割愛されたままだったフランス語の動詞の活用の勉強に一大変化が起きるはずです。どんな勉強でも、楽をして得られるものはありません。地道に積み上げることが大切なのです。欲を言えば35年前に出会いたかった。
アマゾンの本書に関する読者の書き込みを見ると、たとえば英語の重要単語haveに相当する動詞avoirの例文が辞書よりも少ない、という批判があったのですが、言うまでもなく、辞書と同じには行きませんよ。そういう人は辞書を併用することが大切です。いや、実際に本書はフランス語の辞書と併用することで、より使えるものになると思います。たとえば、辞書ではフランス語の構文を示すために、動詞ごとに自動詞か、他動詞か、間接他動詞かで分けています。本書ではそこまではしていません。もし、そういう風に区分しようとしたらはるかに複雑になってしまったでしょう。そういう用途では辞書と併用して動詞について学べばよいのです。
この2冊の参考書は使い込むための、徹底して実践重視の本です。この参考書は100年に一度の時代を画する参考書だと私は思っています。とくにフランスに留学することができない学習者にとって自宅で学べる優れた伴侶となって欲しいと思います。
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