2020年09月23日17時33分掲載  無料記事
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ジャン・ヴィゴ監督「操行ゼロ」

  29歳の若さで不幸にも亡くなったフランスの映画監督ジャン・ヴィゴが監督した「操行ゼロ」(1933)は翌年の「アタラント号」とともに世界の映画人や映画ファンに霊感を今も与え続けている。「操行ゼロ」では寄宿制の中学校で集団生活をする男子生徒たちが、様々な規則でがんじがらめにして彼らを抑圧する教師や寄宿舎の監督官たち、校長らに反旗を翻す。約40分の短編だが、抑圧者への反抗を、大人と同じ真面目なリアリズムのモードでなく、ところどころファンタジーを交えながら遊び心たっぷりに描いた作品である。劇中に出てくる子供たちの遊びの描写がなんとも生き生きして面白い。また、ラストシーンで出てくる県知事たちを迎えた記念式典で、幕内の後方座席には人形が並んでいる。この映画を見ると、制約を破り、自由奔放に映画を作ったイタリアのフェリーニ監督もかなり影響を受けたのではないかと思えてくる。 
 
「操行ゼロ」で反抗の中心となるのはコサ、コラン、ブリュエルという3人の不良少年たちだが、ここにもう一人加わる。最初、僕は少女が一人宿舎に混ざっているのかと勘違いしたのだが、それはルネ・タバールという少年で、髪は女の子のように長く、新学期で集まってくる時も一人だけ母親に付き添われており、その夜は宿舎に泊らず母親と翌朝まで一緒に過ごす。タバールは少年たちから「女々しい」とさげすまれたりもするが、ある日、男教師から髪や手をべたべた触られて「手を放せ」と叫び教師を怒らせる。「意地悪な大人たちと闘うぞ」と反抗の旗を掲げて宿舎の屋上に旗を掲げるのもこのタバールなのだ。 
 
  この映画は政治の右や左に関係せず、あらゆる抑圧的な精神への反旗を描いているのである。 


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