2020年10月01日17時21分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202010011721184

反戦・平和

敵基地攻撃能力の保有により、日本は再び戦争加害国になってしまうのか〜市民団体が緊急院内集会を開催〜

 日本政府はこの間、歴代政権では認めてこなかった「敵基地攻撃能力の保有」に向けた議論を加速させている。安倍前首相は退陣間際の今月11日、新たなミサイル防衛戦略に関して異例とも言える談話を発表し、「今後、与党と協議を行い、年内に方向性を示す」との考えを表明した。 
 
 こうした中、「集団的自衛権問題研究会」(研究会)は9月29日、衆議院第一議員会館に約100人の市民を集め、緊急院内集会「敵基地攻撃能力を検証する」を開催した。同集会には、立憲野党の国会議員らが駆けつけ、連帯の挨拶を行った。 
 
 その際、立憲民主党の原口一博衆院議員は、「私たちは核の傘ではなくて、非核の傘を広げたいと思っている」と述べた。また、共産党の井上哲士参院議員は、「敵基地攻撃能力を保有した上で、集団的自衛権を行使すれば、日本に惨禍を招きかねない」と強調した。 
 
 オンラインで講演を行った名古屋大名誉教授の松井芳郎氏は、国際法の観点から「敵の基地を攻撃し、民間人から被害者を出すようなことがあれば、その国の指導者に対する刑事責任を問われる可能性がある」と指摘し、「東アジアにおける軍縮と国連による集団安全保障を強化することが抑止論を克服するために必要だ」と強調した。 
 
 研究会メンバーで武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の代表を務める杉原浩司氏は、「敵基地攻撃能力の保有を認めてしまえば、事実上、自衛隊は米軍の一部となり、後方支援や米軍防護に留まらず、共同攻撃作戦に駆り出される危険性が出てくる」と指摘。「専守防衛を在日米軍にも波及させていく必要がある」と訴えた。 
 
 今後自民党は、敵基地攻撃能力論について、国防族議員や政権に近い専門家らを中心に、さらに議論を加速させる見込みである。一方で、自民党と連立を組み、「平和の党」を掲げる公明党は、同能力の保有に慎重な姿勢を示しており、防衛のための「スタンドオフミサイル(長距離巡航ミサイル)」を敵基地への攻撃に転用することについて、党内で賛否が割かれている。自民党が公明党を説得して敵基地攻撃能力の保有を認めさせるか、それとも公明党が「平和の党」としての意地を見せてそれを拒むか、今後の動向が注目される。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。