2020年10月05日15時32分掲載  無料記事
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イタリア現代史ミステリー 第一弾「イラリア・アルピの死」(その5)〜チャオ!イタリア通信

(前回記事) 
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→(イタリア国営放送局記者のイラリア・アルピの死から26年。彼女はなぜ死ななければなからなかったのか。事件の経過を振り返る) 
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 マロッキーノ氏は、この事件について取り調べを受けることは全くなかった。現場に駆け付けた最初のイタリア人であるにも関わらずである。さらに、事件の5日前である3月15日には、マロッキーノ氏の家で夕食会が開かれ、イタリア当局の者や、イタリア人記者たちが招待されていた。会の途中にマロッキーノ氏は1時間ほど席を離れた。戻ってくると、モガディシュ犯罪組織のリーダーたちの会議で、イタリア人記者を誘拐し、多分殺害するということが決められたと話す。そして、招待した記者たちに帰国するように言った。イラリアとミランの殺害を予想するような発言をしており、その情報源を知っているにも関わらず、取り調べを受けないというのは、どういうことなのか。事件後の取材で、マロッキーノ氏はイラリアとミランについて、「行ってはいけないところに行ったということは明らかだ」と発言している。つまり、イラリアとミランは「行ってはいけないところに行った」ために殺害されたということだ。ソマリアで“行ってはいけないところ”とは、どこなのか。 
 
 その前に、マロッキーノ氏が警察の捜査に巻き込まれないのは、偶然ではないということを述べておこう。マロッキーノ氏は企業家の肩書きを持ち、1994年当時、約10年間ソマリアに滞在していた。1993年には、第二次国際連合ソマリア活動の命令で、武器売買と不法活動のために逮捕され、ソマリアを追放されている。ローマ検察は調査を始めるが、当時のイタリア大使からの要請があったからか、マロッキーニ氏は捜査処理済みという扱いでソマリアに戻ることとなる。1997年には、ピエモンテ州アスティ県の検察に、有害廃棄物の不正取引に関わっているという疑いで取り調べを受けるが、この件についても捜査処理済みとなる。イタリア大使だけでなく、イタリア政府や国家とのつながりもあることがわかる。ただ、彼のソマリアでの活動は、武器売買や有害廃棄物取引が疑われることからもわかるように、表立ってできるものではなさそうである。また、ソマリアの犯罪組織の動きを把握できる立場にあるということは、何か秘密情報機関との関わりもありそうだ。つまり、マロッキーノ氏が逮捕されたり、取り調べを受けると誰かにとって不具合なことが起こるのである。こういう人物がイラリアとミランについて、「行ってはいけないところに行った」と発言するということは、彼が何かを知っていたと考える方が自然なのではなかろうか。 
(次回に続く) 


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