2020年10月10日09時42分掲載  無料記事
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政治

日本の農作物の輸出は伸びているのか? 輸入はどうか? 〜政府に騙されないためには輸出統計は必ず輸入統計とセットで全貌を見ることが大切

  39%まで落ち込んだ日本の食料自給率を政府は近い将来、50%まで少なくとも改善する方針である、とメディアの記事で読んだことがありますが、その際、マジックの1つとして輸入大豆などで飼育されている家畜(肉牛や養豚)を「国産」にカウントすることがあるようです。菅首相は秋田の農家のせがれと語りつつ、農家を支援すると言って、農産物の輸出を掲げていますが、いったいどこまでの可能性があるのでしょうか? 
 
  政府(農水省国際部国際経済課)のグラフを見ると、農産物の輸入量は1966年に1兆円強だったのが、ほぼ右肩上がりに年々増え、2018年には6兆6220億円に達しています。一方、農産物の輸出は安倍政権に入って確かに伸びてはいたものの、2018年でも総額は5661億円と輸入農産物の10分の1にも達していません。年間の伸びで比べても、農産物の輸出は2017年から2018年にかけて695億円の増加ですが、輸入はその3倍近い1961億円の増加です。要するに農産物の輸入額の増加額の方が圧倒的に高いのです。 
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_1_1_02.html 
  菅義偉政権は農産物の輸出が伸びていると言って単純にそのグラフを示して政権の努力をアピールするかもしれません.たとえば以下のようなグラフです。確かに農産物の輸出は近年増えています。 
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/attach/pdf/200207-3.pdf 
しかし、必ず輸入のグラフとセットで見なくては本質はつかめません。たとえば牛肉の輸出は増えていると言っても、2018年の総輸出量は3560トンで、圧倒的に牛肉の輸入量(約60万トン)の方が多いのです。和牛の輸出の増え率は2017年から18年にかけて31%になっているものの輸出量の全体量が少ないため増え率が高いと言えるので、現実には牛肉輸入量の増加分だけで和牛の輸出総量の10倍ほどに達しています。これはスーパーに行けばいかに輸入牛肉が席巻しているか、庶民はすぐに理解できるでしょう。情報源は農水省の以下の統計です。 
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/attach/pdf/houkoku_gaikyou-15.pdf 
  これらの統計を見れば、日本の農業はますます侵食されていることは一目瞭然です。確かに産物によっては輸出が増えていますが、全体に目をやれば、輸入の方が圧倒的に増えているのです。このことは世界の人口が増加し、農地の拡大が頭打ちになりつつあることや、気候変動のリスクなどを考えると、長期的に日本の安全を脅かす要因となるでしょう。それと同時に、経済統計を操作していた安倍政権の後継政権である菅義偉政権に、統計の不正をさせないことが大切です。統計への信頼がなくなれば政策を作ることは不可能であり、統計への不信はソ連が滅びたのと同様に亡国の道です。 


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