2020年10月30日10時10分掲載
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国際
ミャンマー総選挙の投開票迫る〜憲法改正・少数民族迫害など問題山積み〜
11月8日、ミャンマー総選挙が5年振りに実施される。今年は前回総選挙とは違い、新型コロナウイルス感染拡大の最中であるということもあり、各陣営は感染拡大防止を意識した選挙戦を強いられている。ミャンマーではこの間、新型コロナの感染者が急増しており、未だに外出制限が続いている地域もあることから、特に都心部の選挙運動は盛り上がりに欠けている状況にある。
日本国内では、在日ミャンマー人による選挙運動が取り組まれており、ミャンマーで現政権を担うNLD(国民民主連盟)を支持する市民らが結成した有志団体「We Love Myanmar Japan」が、NLD勝利に向けて都内を中心に精力的な活動を行っている。在日ミャンマー人の総選挙への関心は強く、10月上旬に駐日ミャンマー大使館(品川区)で行われた在外投票では、多くのミャンマー人が長蛇の列を作りながら投票行動を行った。
ミャンマーは1962年から軍政が続いてきたが、2011年に約50年間続いた軍政に終止符を打ち、民政移管を果たした。さらに、2015年に行われた総選挙では、アウンサンスーチー国家顧問兼外相が率いるNLD(国家民主連盟)が約8割の議席を獲得し、圧倒的な勝利を収めた。しかしNLDが政権を取った後も、軍の影響が完全になくなることはなく、現在も国の至る所で国軍による支配が継続している。
日本で生活するミャンマー人女性のA氏は「2008年に制定された憲法が民主化を妨げている」と指摘する。同憲法の規定によると、国の統治に欠かせない内務・国防・国境省の閣僚を国軍司令官が任命するとされており、国軍による少数民族の迫害や警察組織による汚職事件も後をたたない状況だ。また、憲法改正には連邦議会議員の4分の3以上の賛成が必要とされているにもかかわらず、4分の1の議席が軍人に割り当てられており、事実上、国軍の同意なしに憲法改正を行うことは不可能となっている。
A氏は「今後5年間、再びNLDが政権を運営することができるようであれば、さらに民主化が進むはず」と期待を膨らませる一方で、「憲法改正のためには軍の変革が必須だ」と、民主国家実現のための「軍の協力の必要性」を強調している。
現在の選挙情勢を見ると、前回選挙時と比べて議席数を減らしてはいるものの、NLDが過半数を維持するという見方が大勢である。今後5年間でNLDが軍との和解を進め、憲法改正が実現するようであれば、多くの国民が望むスーチー氏の大統領就任と少数民族との関係改善が期待できる。11月8日の選挙結果に注目が集まる。
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