2020年10月31日18時23分掲載
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欧州
ハンガリーのコロナ事情と・・・ 盛田常夫:経済学者・在ハンガリー
ヨーロッパ各地でコロナ第二波の勢いが増しています。ハンガリーも連日、2000名近い感染者が報告されており、来週からマスクの装着規制が強化されます。レストランでも実際の飲食時以外は、マスクの装着が義務化されます。ただ、周辺諸国と比べて、医療施設に余裕があることから、飲食店の閉鎖や時間短縮は予定されておらず、通常の営業が保障されています。現在、人工呼吸器の装着が必要な患者は250名前後で、病室の占有率はほぼ50%のようです。
ハンガリーは中国から、人工呼吸装置を1000台購入しており(当初は28000台発注)、四分の三が倉庫に保管されたままになっていいます。ここからチェコに150台寄贈するなど、周辺国に余分の機器を分けています。この機器の輸入に当たっては、政府に近い実業家に輸入会社を創設させ、機器輸入を一手に引受けさせたというニュースが流れています。どこの国も同じですね。公的発注からの収益は政権政党に流れるように仕組まれています。
ブダペストでは水泳の国際賞金大会が開催されており、マルギット島のホテルやヘリアホテルが選手の宿舎に当てられ、ほとんど監禁状態で生活しているようです。3日ごとにPCR検査が実施されています。この大会は1ヶ月以上かけて行われるもので、今回はブダペスト1カ所で集中して行われるために、長期の大会になっています。北島康介率いる日本チームは予選グループリーグで2位に付けていますが、決勝まで行けるかどうかが見所です。
ハンガリー政府はアメリカの大統領選挙について、トランプ大統領支持を明確にしており、外務省のHPでスィヤールト外務大臣は、10月19日付けの発言として、「ハンガリーとアメリカがこれほど良い関係であったことはない」というトランプ政権賛辞をおこない、さらに同日のインタビュー記事で「バイデンはウクライナ疑惑に答えよ」という議論を展開しています。オルバン首相がいかにトランプが好きでも、ハンガリー政府として、大統領候補の支持を明確にするのは、外交常識から外れるものです。FIDESZ政権は少々子供じみたところがあります。
他方、このバイデン疑惑なるものが、トランプ陣営の策略ではないかと考えられており、それにまつわる記事が出ています。フェイクニューズに踊らされて、一国の外務大臣が「バイデンは疑惑に答えよ」と主張するのは、少々滑稽です。もっとも、オルバン首相の意図は明確で、移民に厳しい措置を取っているトランプ政権の存在はハンガリーの追い風になると考えているのでしょう。さらに、民主党を支持する「ハンガリーの天敵ソロス」への対抗心があります。この二つがトランプ支持表明となったと考えられます。
日本では菅首相の外遊時の演説がこちらでもいくつかのメディアで取り上げられていました。ASEANを「アルゼンチン」と発声して修正したようですが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のcoverageをcollegeと読んで修正なしで演説を終えたことも報道されています。国会の所信表明演説でも、いくつかの漢字の読みを間違えたことが指摘されています。たんなる言い間違えではなく、菅義偉の学力水準が問われる間違いです。
もっとも、麻生太郎も安倍晋三も、学力という点で問題があったことは周知のことです。日本では学力水準は政治家の資質のうちに勘定されませんが、せめてcoverageという単語は事前に補佐官に良く聞いて、理解することが必要でした。聞きことが恥ずかしいと思ったのか、最初からcollegeとcoverageの違いが分からなかったのか。学力の高い補佐官たちは、まさか首相にもなろうとする人が、coverageという単語を知らないとは思わなかったのでしょうか。これでは西欧やアメリカでの外交デビューはもっと先になるでしょう。
2020年10月29日
盛田常夫:経済学者・在ハンガリー
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