2020年11月09日09時54分掲載  無料記事
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人類の当面する基本問題

(30)新コロナウイルスによる感染者数・死亡者数 実数はまだ不明─2 抗体検査・抗原検査・集団免疫 落合栄一郎

 先に(注1)、この問題、すなわち感染者数・死亡者数の実態の不明確さについて議論したが、主としてPCR検査による感染者数値にもとづく公式発表についてであった。感染したかどうかについて、別の検証の仕方がある。一つは、ウイルスについている抗原なるものの検出─抗原検査。もう一つは、ウイルスへの抗体が体内にすでにあるかどうかの検証(抗体検査)である。 
 
(1)抗原検査 
 ウイルスの中の遺伝子(DNAこのコロナの場合はRNA)を検出することによって感染しているかどうかを検査するのが、PCR検査であるが、ウイルスの表面に突き出ている特定の蛋白質である抗原を見つけようとするのが、抗原検査である。それには、ウイルス固有の抗原タンパクを特定し(構造なども決定)、それに結合する抗体タンパク質を人工的に合成して、検査に使う。その上、サンプル中にどの程度の数の抗原があれば、検出可能か、など、そのテストの正確度は充分に検討されなければならない。 
 原理的には、PCR検査より、簡単で短時間でできる。ですから、抗原検査も感染したかどうかの検査に利用されている。ただ、どの程度,現実に利用されており、感染者確定値にいくら寄与しているのか、明らかではない。外国からの入国者に空港で行なう検査などには利用されているようである。 
 
(2)抗体検査 
 抗原(を持ったウイルス)が体内に入ってくると、それに結合する抗体が体内に作られる。抗体形成は免疫機構の一部であり、この機能を人工的に作り出そうとするのがワクチンである。しかし、ワクチンがなくとも、人体の免疫機構にはさまざまなものがあり、まず、異物が体内に入ると、それを除去(細菌やらウイルスを破壊─食細胞)する機構がある(自然免疫)。この免疫機構を逃れた異物に対しては、特定異物(抗原)だと判断すると、T系、B系の白血球(リンパ系)が刺激されて、B系では、その侵入物(の抗原)に結合する抗体をつくり、T系の食細胞などがそうした抗体結合ウイルスを攻撃する(獲得免疫)。免疫機構はかなり複雑であり、これは簡単な記述にすぎない。 
 ワクチンはこうした免疫機構を動かし抗体を予め作るか、作る能力を高めておくのが目的だが、もともと、自然にもそうした能力は備わっているのである。ただし、今回のウイルス(SARS─CoV─2)は、おそらく地球上に初めて現れたもので、人々は、このコロナウイルスを経験していなかったので、それに対して、抗体を作る準備はできていなかったであろうと考えられている。すなわち、新たに抗体生成機能を作り出す必要があった。 
 しかし、コロナ型その他のウイルス、そして多くの異物への抗体作りの経験はおそらく多くの人に備わっていて、それが、今回のコロナウイルスにも反応して抗体を作る可能性はあるようである。 
 米国ニューヨーク州で無作為に選んだ3000人の新型コロナウイルスへの抗体を検査したところ、14%ほどの人が抗体を持っていた─7人に1人が感染していたことになる(注2)。 
 スペインでは、今年5月ごろ、6万人に抗体があるかどうかの検査を実施した(注3)。この時期スペインはヨーロッパでも最も厳格なロックダウン政策がとられていたにも拘らず、5%の人が抗体をもっていることがわかった。 
 以上の検査結果その他からして、充分に確認できているかどうかはまだ不明確だが、WHOは今回のウイルス(SARS─CoV─2)に感染した人は 、すでに全人類の10%ぐらいであると発表している(注2)。とすると、感染者は、現在全世界で、7億数千万人ということになる。現在までの死者数(公式発表数)はやく約百万だから、このコロナによる致死率(死亡者数/感染者数)は0.13%程度であり、感染者数としてはパンデミックでも、その深刻さは低い。しかも、死亡者が過大評価されているらしいことも含めると、この致死率はこの数分の1から10分の1程度が本当かもしれない。 
 なお、死亡率(死亡者数/全人口)は、この抗体検査によるWHOの議論によれば、0.013%になる。先の議論(注1)からは、公式発表によれば、死亡率は、アメリカで0.07% (66.7/100,000)、 イギリス0.07%、スエーデン0.06%、カナダ0.03% であり、抗体検査からの0.01%の数倍である。 
  一方、先(注1)の議論では、PCR検査による感染者は、4千万人。抗体検査からの数値の20分の1である。これは、単に人類全員にPCR検査が行なわれていないことによるであろう。 
 抗体の陽性(存在)は、ウイルスが一度は体に侵入し、抗体が出来、症状を発揮する前に撃退されて(PCR検査では陰性のはずだが、偽陽性の可能性大)いてその抗体が残っていたか、抗体もあるが症状も出ていた(PCR真陽性)かである。ここでも問題は、抗体陽性者全てを感染者とするのが正当かどうか。抗体陽性者の多くは、無症状だろうし、おそらく、PCR擬陽性者もほとんどは無症状であろう。こうした人を「感染した(Covid─19 陽性)」と定義するのか、または、「症状がある場合のみを感染した」と定義するのか、定義の問題であろう。この定義次第で、パンデミックであるかないかが決まるということになるのだろうか。パンでミックという宣言は、社会全体への影響が非常に大きい。それなのに、本当の感染者数が曖昧ということは、今回の基本問題である。 
 さらに抗体が出来た後、どの程度(期間と量)体内に残るのかという問題がある。このウイルスへの抗体は、出来ても、かなり速やかに消滅するという研究結果が発表されている。イギリスのインペリアルロンドン大学で6月20日から9月28日にわたって36万5千人の抗体陽性率を検査した(注4)。結果、陽性率は初期の6%から4.4%に、すなわちこの間(3ヶ月)に約25%低下した。この研究結果によれば、この抗体はかなり速やかに消失するようである。年齢的には、若い人ほど抗体は長持ちする。この問題は更に充分に検証する必要がある。 
 
(3)集団免疫? 
 こうした結果(抗体は急速に消滅)から、いわゆる「集団免疫」獲得は、無理な課題であるとWHOテドロス総長は主張している。それには、集団免疫がウイルス対応に勝利するには、抗体獲得率70%以上が必要と考えられていることもある。集団免疫を否定したい(その可否の検証はまだまだ)側には、Covid─19に対するワクチンの開発(その利益)への期待があるのかもしれない。 
 現在、ヨーロッパ全域と、北米などでは9、10月頃より、感染が急拡大していることは広く報道されている。これは気温低下によるウイルスの活発化というインフルエンザと同様な現象なのであろうか。 
 ところが、集団免疫に起因すると考えられるような現象がいくつかの国で見られている。例えば,オーストラリアでは、7─8月(冬)には感染のピークがあったが、それ以降急激に減少している。ニュージーランドは、冬8月ごろ僅かに出たが、5月以降,感染者はほとんど無くなったと見なせる。シンガポールでは、初期のピーク(4月)以降、7─8月頃に僅かな第2波があったが、それ以後ほとんど消滅。タイでは5月以降ほとんど消滅、サウジアラビアも7月以降減少しつづけほとんど消滅。ベトナムでは9月以降ほとんど消滅。これらの国では、Covid─19死者数も減少している。集団免疫を意図したかはどうかは別にして、ロックダウンなどはせずにやってきたスエーデンは、他のヨーロッパ諸国ほどの第2波感染増は見られず、死者数は、ここ2ヶ月ほど、ほとんどゼロに近くなっている。 
 なお、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどの南半球諸国では、9─10月以降、おそらく気温上昇(夏)のためにか、感染者数は減少傾向にある。 
逆に、ヨーロッパの急上昇は単に気温の低下(冬)によるウイルスの活動度上昇(通常のインフルエンザと同様な)によるのであろうか。 
 なお、ここで用いた数値は、主としてPCR検査値に基づくと考えられるものであるが、感染者数の実態は、いまだに不明確なので、上の議論がどの程度正鵠を得ているか不明である。 
 
(4)真の感染者数? 
 さて、真の感染者数を別の面からもう一度考え直してみよう。カナダBC州では、11月5日の時点で、感染者総数16560人、これまでの入院者数1059人。入院率(入院数/感染者数)は6.3%。入院者以外は無症状とするならば、やはり無症状者は、陽性者の94%。このデータは、PCR検査陽性者のうち、おおよそ10%ぐらいが症状を持ち、残り90%ぐらいは無症状ということを意味するであろう。これが通例ならば、真の感染者(症状あり)は、やはりPCR検査陽性者(擬陽性者も含む)の10%程度となるようである。これは、“真の感染者は症状ある者”という定義に基づいた議論である。ただし、単なる1例に基づいており、「 症状のあるなし」の実質的データに基づいてはいない。そのようなデータがあれば、それに基づいて充分に検証する必要がある。 
 なお、無症状者でも陽性ならば、他の人に感染する可能性があるから、感染者を「症状のあるもの」に限定するのは適当でないという議論はあるであろう。しかし、世界医師組織(World Doctors Alliance)のイギリスその他の国の政府宛の公開書簡(注5)によれば、公式の感染者の80%は無症状であり、呼吸器系の病気の歴史から見て、こうした病気の無症状者は感染性がないと考えられているとしている。そして、この集団は、人類は既に、このウイルスへの集団免疫を獲得しているとしている。 
 
(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044 
(注2)https://www.dailyshincho.jp/article/2020/04260556/ 
(注3)https://www.rt.com/news/504391-coronavirus-spain-high-numbers/ 
(注4)https://www.rt.com/uk/504647-coronavirus-antibody-prevalence-falling-england/ 
(注5)https://www.globalresearch.ca/world-doctors-alliance-open-letter-uk-government-world-governments-citizens-world/5727390?utm_campaign=magnet&utm_source=article_page&utm_medium=related_articles 


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