2020年11月14日15時40分掲載
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国際
2021年のバイデン大統領と北朝鮮 米朝交渉 その2
バイデン大統領になった時、北朝鮮と米国がどのように関係するのか、そのことは日本と韓国の人々の明暗も関わってくる重要なイシューです。ワシントンポスト紙の記事「North Korea watches Biden victory with one finger on the missile test trigger」(北朝鮮はミサイル試射のボタンに指をかけてバイデンの勝利を見つめている)はバイデン氏がオバマ大統領の副大統領だった時の対北朝鮮政策は宥和政策であり、むしろイランやキューバとの国交回復への歩みの方が軸になっていたことを記していました。このことは1994年に一時、米朝戦争再開の危機があったものの、基本的にはそれ以後の米政権の方針を継続していたとも読めます。
しかし、トランプ政権が北朝鮮と外交交渉を進めた背景にはもはや米本土への核ミサイル攻撃の可能性が就任中に生まれる状況に至っていたことがあり、その意味ではバイデン大統領になった場合も、オバマ大統領時代のような宥和的な方針を取ることはもはや不可能になってしまったことを意味しています。
そうなると、バイデン大統領はトランプ政権の外交を踏襲して平和交渉を継続するのか、あるいは、政権転覆を目指す武力政策を選ぶのか、大きく分けると2通りでしょう。しかし、オバマ大統領が就任中、財政の危機で経済政策に使える予算を共和党議員たちに天井を設定されてしまったように、今回も上院は共和党が多数派を死守しており、バイデン大統領が軍事に使える予算をめぐっても紛糾する可能性もあります。北朝鮮と戦闘することになればそのコミットメントも予算もイラク戦争どころでは済まないかもしれません。さらにその場合は日本の戦後史にとっても大きな変化が起きることになるでしょう。計算の働くオバマ大統領(当時)は就任中に、朝鮮半島の有事の場合、日本国憲法の制約から日本の自衛隊などの協力がまだ十分に得られないと考えたのかもしれません。
そういうことを考えると、COVID-19のもとで経済をテコ入れしなくてはならないバイデン大統領にとっては北朝鮮と戦争をする余裕はほとんどないとも言えるかもしれません。たとえどんな小組織のヒットマンたちのチームが活躍したとしても、その後、朝鮮半島や東アジアがどのような事態になるかは想像できないのです。そう見ると、過去に痛烈に北朝鮮の政府を批判してきたバイデン氏がどうするのか、また北朝鮮が米国にどのようなアプローチを行うのか、そこが特に就任100日間で興味深いところではないでしょうか。1つ言えることは、過去の再現・反復にはならないであろうことです。
※Trump will leave office foiled by the North Korea nuclear problem. Will Biden fare better?(LA Times)
https://www.latimes.com/world-nation/story/2020-11-13/another-u-s-president-will-leave-office-foiled-by-the-north-korea-problem-will-biden-fare-better
”Enter President-elect Joe Biden, who in debates likened Trump’s tete-a-tetes with Kim to meeting with Adolf Hitler on the eve of World War II. The incoming U.S. president has promised South Koreans he will return to “principled diplomacy” in dealing with North Korea and the ever-emboldened Kim.”
LAタイムズはバイデン氏の外交が従来の「原則」重視外交に戻る可能性を示唆しつつも、交渉継続を期待する韓国政府の康 京和外相の言葉を引用し、トランプ大統領が築いた成果を活用する可能性があることを示しています。
”South Korean Foreign Minister Kang Kyung-wha, responding to lawmakers’ questions last week, said she believed Biden would try to capitalize on the momentum Trump built in his summits with Kim Jong Un to continue nuclear talks.”
■韓国外相、訪米も「不発」 会えたのはポンペオ氏、バイデン氏陣営には接触できず(夕刊フジ)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201112/for2011120008-n1.html
大統領選挙後に訪米した韓国政府の康 京和外相がバイデン氏に会えなかったことを伝える記事ですが、実はトランプ大統領が負けを認めたがらないことも影響してか、バイデン氏に国家安全保障などの大統領の執務の引継ぎのための情報伝達が未だ行われておらず、共和党議員からも事態を危惧する声が出ています。おそらく米朝交渉の経緯なども未だバイデン氏に伝えられていないであろうことから、慎重なバイデン氏としても韓国政府の外相に会うことは控えたいところではないでしょうか。しかし、先ほどのLAタイムズによると、バイデン氏は北朝鮮との関係に関しては文在寅大統領と連絡を密に取ることを約束したと報じられています。
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