2020年12月02日17時57分掲載  無料記事
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検証・メディア

尖閣諸島が係争地だという事実を無視するマスメディア Bark at Illusions         

 尖閣諸島は係争地であり、日本と中国は尖閣諸島の領土問題を棚上げすることで国交を正常化させた。尖閣諸島の問題を語る時、マスメディアは、この根本的な事実を無視してニュースを伝え、尖閣諸島は「歴史的にも国際法上も日本の領土」だとか、尖閣諸島に「領有権の問題は存在しない」などという日本政府の主張が正しく、中国が一方的に「領海侵犯」を行っているかのような印象を読者や視聴者に与えている。 
 
中国の王毅外相が来日した際のニュースでも、マスメディアは尖閣諸島が紛れもなく日本の領土だということを前提としてニュースを伝えている。 
 
「(外相)会談で何が話し合われたのか。議題は経済に安全保障、国際情勢まで、幅広い分野がテーマです。……そして中国による海洋進出。中国当局の船が沖縄県尖閣諸島の沖合で日本の領海や接続水域を航行した日数は、今年、過去最多を更新。国際的な懸念が強まっています」(NHKニュース7、20/11/24) 
 
「沖縄県・尖閣諸島周辺での公船活動の活発化や軍拡を進める中国の存在は、日本にとってより大きな『脅威』となっている。今年に入り、尖閣周辺の接続水域での中国公船の航行日数は24日で通算305日となり、過去最多を更新した。10月には、2012年の尖閣国有化以降で最も長い57時間以上、領海に侵入する事案も発生した。今回の会談の狙いは『常態化する中国の挑発をいかに食い止めるかが焦点』(関係者)で、茂木氏は王氏に領海侵犯について『前向きな対応』を要求。中国との対話により、緊張がエスカレートしないよう腐心した」(毎日20/11/25) 
 
「菅総理大臣は夕方、中国の王毅外相と会談。……沖縄県の尖閣諸島の周辺海域などの海洋・安全保障の問題などで、中国側の前向きな対応を強く求めました」(NHKニュース7、20/11/25) 
 
「尖閣問題では溝の大きさが目立った。外相会談では茂木氏が公船の日本漁船への接近や過去最長の領海侵入などを挙げ、日本側は繰り返し懸念を表明した。これに対し、王氏は会談後の共同記者発表で『一部の真相が分かっていない日本漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入っている。中国としてやむを得ず、反応をしなければならない』と一方的な主張を展開した。 
吉田朋之外務報道官は25日、王氏の発言について『中国側の独自の立場に基づくもので全く受け入れられない』と反発した」(毎日20/11/26) 
 
マスメディアは「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も、疑いのない我が国固有の領土」であり、「領有権の問題はそもそも存在をしていない」(加藤勝信官房長官、11月26日の会見)という日本政府の主張を全く疑おうとしない。中国側の主張も伝えるには伝えているが、あくまで「中国側の独自の立場に基づくもの」で、「一方的な主張」でしかないのだ。 
 
 しかし冒頭でも述べた通り、尖閣諸島は日本の他に中国と台湾が領有権を主張する係争地であり、日本と中国は尖閣諸島の領土問題を棚上げすることで国交を正常化させた経緯がある。2012年に尖閣諸島を国有化し、「領有権の問題は存在しない」などと主張している日本政府の方こそ、「独自の立場に基づくもの」で、「一方的」な言動と言うべきだろう。 
中国としては、そのような一方的な日本の言動を看過していれば、尖閣諸島は日本の領土だという日本側の主張を中国政府が認めたと国際社会で判断されかねない。だから中国は「やむを得ず、反応」しているということだろう。 
尖閣諸島が「歴史的にも国際法上も日本の領土」だというなら、棚上げしていた交渉を開始し、日本政府はその根拠を示して中国政府を説得すべきではないか。 
 
 中国を巡っては、南シナ海や香港の問題などでも、中国を一方的に貶める報道が続いている(日刊ベリタ、20/9/3、20/9/13など参照)。非営利シンクタンク・言論NPO(20/11/17)によると、日本人の対中感情はこの1年で悪化しているということだが、その責任はマスメディアにもある。 
都合の悪い事実を無視して日本政府の一方的で誤った主張が正当であるかのように装い、つまらぬナショナリズムを焚きつけてどうなるのか。報道関係者は自分が何をしているのか考える必要がある。 


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