2020年12月06日12時21分掲載
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労働問題
コロナ禍に苦しむ企業と労働者〜商業界をめぐって
1948年に創刊した老舗経済誌「商業界」などを発刊していた(株)商業界という企業をご存知であろうか。小売、流通業界に精通し、セミナーなども開催する業界では有名な老舗の企業である。コロナ禍が継続する中、経営難から今年4月に倒産し、その長い歴史に幕を下ろしている。
商業界は、出版不況と言われる状況が継続する中、昨年末から再建のための社内プロジェクトを立ち上げ、従業員が協力して再建を進めている最中にコロナ禍に見舞われた。東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定した時期と重なる3月末、同社は突如として従業員を一斉に解雇し、翌月2日には破産手続きを開始している。その際、退職金などの多くの債務は未払いのまま残され、元従業員はその行き場を失うことになった。
「コロナは天災」などと言う者もいるが、解雇された当事者にとっては経営者による「人災」である。現在、元従業員らが中心となり、資産がほぼ残されていなかった商業界に代わり、親会社で商業界との関係が深い、(株)商業界会館に対して債務の弁済を求めている。
※ 活動の詳細については、以下のブログを参照されたい。
https://ameblo.jp/unpaid-wages/
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コロナ禍の影響はあらゆる分野に及んでおり、特に体力のない中小・零細企業へのそれは甚大である。東京商工リサーチの調べによると、新型コロナ関連破綻は、11月5日時点で700件に達しており、過去最多のペースで推移しているという。その内の7割ほどは中小・零細企業で、先の見えないマラソンのような状況を強いられる中で、大企業ほど体力のない多くの企業が事業継続困難となっている現状がわかる。
政府により中小・零細企業を支援する施策なども実施されてはいるものの、それだけでコロナ禍における損失が埋まるはずもなく、まだまだ先が見通せない状況が継続している。このような危機が起こった際、最終的な皺寄せはいつも立場の弱い労働者に向かう。
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2020年も終わりに差し掛かってきたが、新型コロナウイルス感染拡大収束への道のりはまだまだ遠い。政府が進める「Go to」事業の影響もあってか、新規感染者数は日々その数値を更新し続け、12月4日には2442人、死亡者についても同日過去最多の45人にまで達している。状況を打開するためのワクチン開発が急がれる中、一部の国では今月中にも医療従事者を中心にワクチン接種を進める動きがあるものの、そのワクチンが日本国民一人一人に行き渡るまでには、まだ相当程度の時間がかかりそうである。
市民の不安と疲弊は限界に達しつつある。先般の商業界のような事態になる前に、政府には継続した手厚い支援策を望みたい。
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