2020年12月18日00時34分掲載
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欧州
リベルテ、エガリテ、プレカリテ 最近のフランスの三色
リベルテ、エガリテ、フラテルニテ。日本語で自由、平等、友愛がモットーだった革命後のフランスだが、最近、フラテルニテ=友愛の替わりに、生活の不安定さを意味する「プレカリテ」が急浮上している。今年の2回の自宅ごもりを経て、フランスの庶民たちの暮らしはかなり追い詰められているのかもしれない。もちろん、それは日本とて同じなのだろう。けれども、なんか最近、私のフランスの知人たちが今までなかった類の悲鳴を上げているのだ。
たとえば俳優を含む劇場関係者、あるいは、画家や漫画家たち。そう、生活必需品とは見なされない類の労働に関係している人たちの嘆きをよく聞くようになった。アーチストの間に「r」を入れた、「Artriste」=悲しい芸術家、という言葉遊びも見たばかりだ。画家の知人は、COVID-19で生活が窮しても、中でも一番補償がないのは画家と漫画家だよ、とぼやく。俳優も補償はあると政府は言っているが、未だに手にしていないし、生活ギリギリの額に過ぎないと言っている。
今日見たのはまた別種の職業の人々の苦境だった。ふくよかな中年女性たちが全裸で牧場でポーズを取っているヌードポスターで、彼女たちの前に牛が2頭いるのだ。牧場経営者たちの生活が行き詰っているという。フランスの酪農関係者はリーマンショックが欧州に飛び火した後に、農業金融までおかしくなって、多くの人が自殺していた。その後どうなったのだろうと思っていると、女性たち酪農の労働をしている人々が脱ぐまでに至っている。しかも、男性も脱いでいるのだ。とはいえ、彼らはお金を求めるというより、社会における酪農の必要性とか存在感を広くアピールしたがっているようだ。
僕がフランスの知人にプレカリテの色は何色ですか?と尋ねたら、「黒」でしょう、と答えた。もちろん、彼女は皮膚の色で人種差別をする人ではないことを断っておきたい。そして、つけたすと、この「リベルテ、エガリテ、プレカリテ」の風刺は文化大臣に対する抗議デモで使われていたものだ。文化が惨め、ということは、つまり、文化的な活動が今追い詰められており、その分野の労働者も我慢の限界に近付きつつあるのだろう。文化は食料品や医療と同じように必需品なのだ、と芸術家や俳優だけでなく、労働組合のCGTなども盛んにアピールしている。
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