2020年12月24日13時58分掲載
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政治
真実は如何に〜「桜を見る会」懇親会をめぐり東京地検が安倍前首相の公設秘書を起訴〜
年末に入り、安倍晋三前首相の周囲が賑やかになってきた。東京地検特捜部は21日、「桜を見る会」の前夜祭を巡る問題について、安倍氏本人に対して任意での事情聴取を行った。検察はその後、安倍晋三後援会の政治資金収支報告書に懇親会の収支が記載されていなかったとして、24日に公設第1秘書である配川博之氏を政治資金規正法違反で略式起訴している。当の安倍氏本人は、嫌疑不十分で不起訴処分となった。「桜を見る会」の前日夜に開催された懇親会では、昨年までの5年間にかかった懇親会費用の総額が2000万円を超え、この内の800万円以上を安倍氏側が負担したとされている。
政治資金規正法は、収支報告書の記載責任を政治団体の会計責任者に負わせているため、不記載の罪で立件するためには具体的な関与が必要となる。今回の件であれば、前夜祭を主催した「安倍晋三後援会」に対して、安倍氏が具体的に収支報告書に対する不記載の指示や了承などをしていなければならない。安倍氏と公設第1秘書の配川氏の双方が関与を否定している現状において、検察も共謀しているとする客観的な証拠がなければ、起訴する事は難しかったのであろう。
本件事情聴取が行われた際、立憲民主党の江田憲司氏は「安倍氏には国会に出てきて、証人喚問でも参考人招致でも政治倫理審査会でもいい。しっかり説明をして欲しい」と主張。また、日本共産党の小池晃氏は「7年8ヶ月にわたって首相を務めてきた人物が捜査当局から聴取を受けたという事実は極めて重大だ」と、安倍氏の証人喚問を求めている。
自民党内からも、二階俊博氏が「(本件の政権への影響について)全くないとはいわない」と述べるなど、危機感が感じられる。同党の下村博文氏は、「当然年内にやった方がいい」と年内の国会における説明の必要性について言及。自民党は25日にも衆参両院の議院運営委員会において、安倍氏本人に説明させるべく調整を進めているが、偽証罪に問われる可能性のある証人喚問には消極的だ。
安倍氏は、これまで本件について繰り返し国会で「事務所は関与していない」「明細書は無い」「差額は補填していない」などと述べてきた。これら3点の文言について、立憲民主党が衆院調査局に調査を依頼したところ、少なくとも118回は繰り返し述べられていたという。野党はこられの答弁を「虚偽答弁」であるとしており、説明の場でその発言の真偽が正されることとなる。
首相経験者が捜査当局の聴取を受けるのは異例の事態である。今回検察は安倍氏本人への刑事責任を問うことができなかったが、今後何らかの形で政治責任を問われる可能性は高い。本件が新聞各紙で報道され始めたのが2019年10月。それから1年以上が経過し、当時首相であった安倍氏も一国会議員に戻った。首相を退任した安倍氏の口から国会の場で何が語られるのか。もしそれが「国会で説明済み」という免罪符を得るためだけのものであれば、国民が納得するとは到底思えない。安倍氏の政治生命、ひいては安倍氏の政治方針を継承する菅政権の今後を占う上でも、その発言が注目される。
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