2020年12月31日17時54分掲載
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外国人労働者
コロナ禍で明らかになった日本の国際人権意識と市民社会の取組〜オンラインイベント「国際移住者デー2020」
今年はまさに新型コロナウイルス一色の1年だった。コロナ禍により、様々な問題点が浮き彫りになった1年とも言えるが、日本社会が抱える大きな問題点、とりわけコロナ禍により改めて直視する必要に迫られているのが在日外国人の問題ではないだろうか。
在日外国人支援活動に取り組む「移住者と連帯する全国ネットワーク」は、国連が2000年に定めた「国際移住者(移民)デー」に合わせ、毎年、移民・難民の現状について考えるためのイベントを開催してきた。今年はコロナ禍ということもあり、12月19日にオンラインで「国際移住者デー2020」を開催。イベントでは、移住連が取り組んできた「移民・難民緊急支援基金」の報告や、困難に直面する在日外国人らからの切実な報告が行われた。
コロナ禍が広がった今年5月、多くの移民・難民が生活困窮に追い込まれ、公的支援の枠組みからも外される中、『市民社会から支えるため』に移住連が取り組んだ「移民・難民緊急支援基金」は、特別定額給付金の対象外となる移民・難民・外国ルーツの人などを対象に、1人あたり3万円の現金支給を行う取組。基金の総額は49,794,564円にのぼり、今年5月から9月までに計16回、1645人を対象に支援を行った。支援対象者の国籍はトルコ(クルド人)・597人、ベトナム・185人、ミャンマー・144人、フィリピン・87人など多岐にわたり、在留資格別々で見ると仮放免・832人、短期滞在・253人、特定活動・229人、在留資格なし・216人などとなっている。
難民申請者を含む仮放免者や非正規滞在者に関しては公的支援の対象外で、衣食住という生きるために不可欠なものすら脅かされる状況があり、劣悪な労働条件から逃げ出した技能実習生など、支援策が届かず、自らの権利すら知らない状況に置かれてしまう外国人もコロナ禍の中で増加した。
移住連理事で「移民・難民緊急支援基金」運営チームの高谷幸さんは、政府や自治体によるコロナ対策には一部評価できる面があるとしつつも、「国籍や在留資格による差別、困窮状態にある人たちの放置、朝鮮学校の排除、言語アクセスの問題など課題が多い」と指摘する。また、「支援を受けた当事者から『自分たちは見捨てられていなかった』などの声が寄せられた。基金は当初の倍以上の規模となるなど、本当に多くの人からの寄付や支援もあり、新たなネットワークの構築にも繋がるなど、市民社会としての希望も見えた。今後も移民・難民の生活困窮状態を可視化し、コロナ禍が明るみに出した日本社会の構造的な問題、そして政府や社会としての責任を追及したい」と報告した。
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ理事長で青山学院大学教授の申惠丰さんは、「コロナを乗り越える新しい社会の展望」と題して講演。国際人権法の観点から日本社会の問題点について警鐘を鳴らした。
日本で難民申請が認められず、本国への退去強制のために長期収容されたケースを受け、国連の恣意的拘禁作業部会は今年、日本の入管収容は国際人権法に違反しているとの意見書を出している。自由権規約、社会権規約、子どもの権利条約といった人権条約では、自国人か他国人かを問わず、さらに無国籍者であっても人権保障の義務を課しており、日本の入管法よりも人権条約による人権保障の方が上位の関係にある。しかし実際には上記の事例のように、外国人の人権を「入管法違反かどうか」だけの観点で判断しているのが日本の現状でもある。
申教授は、「実質的に無期限の収容を認める日本の入管法は自由権規約に反する。入管法も一法律に過ぎず、その上に憲法と人権条約があることを意識しなくては」と指摘し、特にコロナ禍では国際人権の考えを活かすべきだと強調する。
「日本は人権条約をほとんど履行していない。安倍政権下では生活保護を切り下げる一方で武器を大量購入し、コロナ禍でも困窮した人のためではなく、自民党の有力政治家と繋がっている一部の業界にのみ予算を使っている。社会権規約上、本来国は予算という資源を人権実現のために使う義務がある。日本は人権理事会の理事国でもあり、国際人権の観点こそが必要。同じ社会でともに生きる難民や技能実習生たちの人権にも目を向け、考えなくては」
(つづく)
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