2021年01月04日13時41分掲載
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コラム
古いソ連のオートバイの修復動画に心動かされた
年末、YouTubeで久々に心を動かされる動画に出会った。ぼろぼろになったソビエト時代のオートバイを工場で黙々と修復していく動画である。動画の主人公はほとんど手元しか露出せず、修復のプロセスが1つ1つ、美しいカットとよく採られた音声で見ることができる。印象深いのはバイクの鉄に付着した錆や汚れを1つ1つ様々な溶液につけて溶かし、その後、鑢をかけて綺麗にしていくのだが、もちろん、おそらく腐食が進みすぎて、全部取り変えたパーツも少なからずあったろう。
https://www.youtube.com/watch?v=y8HEZ-x4-_w
しかし、それでも黙々と、解説とか説教的なものは何もなく、作業が進んで行くので、潔い。僕はこの動画を見て、かつて見たフランス映画の「抵抗」を思い出した。ロベール・ブレッソン監督が一人のナチ時代の捕虜の脱走を描いた再現ドラマで、骨子は鉄格子の中に閉じ込められたフランス人の捕虜が小さなスプーンを用いて、鉄格子に穴をあけていくプロセスだった。この映画でも人間ドラマ的な要素はなく、一貫してコツコツ脱走のための作業が手元にスポットを当てて進められていくのである。そうした断片の集積が、最後に捕虜が檻から抜け出して外に出ていくところで大きな解放感と感動になって結実するのだ。
この古いソビエトのオートバイの修復と題されたロシアで撮影されたらしい映像でも、同じ構造になっていて、最後に完全に修復されたバイクに乗って、主人公が雪の積もった街路に出ていく。そこはやはり感動的なのである。それまでほとんど手元しか見えなかっただけに、工場の扉が開いて走り出していくところは驚きがあるのだ。とはいえ、若干、作業で使った溶液の廃液などは産業廃棄物として汚染を生み出すのではないか、とか、ソ連のオートバイの燃費の効率はどうだったのか、など疑問もないではない。
それでもこの動画は何かを感じさせるのである。そもそも修復を見せる動画でありながら、ノウハウを伝承する映像スタイルではなく、本編の映画のような映像にこだわったスタイルなのだ。そこにはソ連の再生とか復活、という象徴的な思想があるのかもしれないが、とはいえ、今更崩壊したソ連をそのまま再生できるわけもない。だから、もし再生させるとすると、1つ1つソ連を構成していたパーツを分解し、分析し、再構築する必要がある。腐食した部分を削ぎ落して・・・。こんな風に見るのは、少しうがった見方かもしれない。この動画はGreat ideaというYouTubeチャンネルで、筆写はそれがどのような人たちによって作られているかという情報は現段階で持っていない。ただ、ロシア語で説明されているのでロシア人が運用しているのではないかと推測はしている。
■再開のための哲学 マチュー・ポット=ボンヌヴィル著「もう一度・・・やり直しのための思索」(Recommencer)
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