2021年01月06日22時09分掲載  無料記事
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欧州

Sciences Poを指導してきたフランスの大物政治学者が義理の子供への性的虐待で糾弾される 30年前の犯罪を子供が暴露した本「La familia grande」で刑事事件に

  フランスのシアンスポ(Sciences Po ,政治学院)と言えば、エリートを輩出する名門校として世界的に知られていますが、その政治学院の運営母体である国立政治学財団(FNSP)の政治学者が義理の子供への性的虐待で告発されています。渦中にいるのはオリビエ・デュアメル氏で、義理の子供に本の中で糾弾され、政治学院の関連財団の職を辞したばかり。放送局Europe1のコメンテイターも辞職したとされます。 
 
  報道によると1980年代末に当時幼かった10代の義理の息子を自分の性欲に利用したとされ、その子の双子の片割れで法学教授のカミーユ・クシュネル(Camille Kouchner)さんが本「La familia grande」に書いたと報じられています。つまり、この場合は男親が男の子に性的虐待をしていたことになります。そして、その子と双子の関係にある女性が事件から約30年後に雑誌に連続で記事を書き、それを本にまとめたということのようです。30年前の出来事ですから、双子のきょうだいのプライバシーもあり、なかなか口にできなかったに違いありません。 
 
 BBCによると、クシュネルさんらは元外務大臣のベルナール・クシュネル(「国境なき医師団」の創設者でもある)の実の子供で、両親が離婚した後に母親がデュアメル氏と再婚して、その家庭で事件が起きたのだとされています。今後、デュアメル氏に対する刑事的な取り調べが行われる模様です。BBCの記事を参照しましたが、最も痛いのは当時、その取り巻きたちも出来事を認識しながら見て見ぬふりをしていたらしいことです。鯛は頭から腐ると言われますが、この事件はフランスの現状をうかがわせる事件です。最近、フランスでは10人に1人が親から性的虐待を受けたことがある、というような記事も出ており、家族内における性的な犯罪が今後はもっと可視化されていくと思われます。 
 
 
※BBC 
Olivier Duhamel: French political scientist faces inquiry over sex abuse claims 
https://www.bbc.com/news/world-europe-55544499 
 
※Seuil出版「La Familia grande」 
https://www.seuil.com/ouvrage/la-familia-grande-camille-kouchner/9782021472660 
スイユ出版のサイトでは物語に類する「レシ」というカテゴリーで本書は紹介されている。 
 
※ルモンド紙には本書がどのような内容とインパクトを持つかが書かれている。 
https://www.lemonde.fr/societe/article/2021/01/04/la-familia-grande-autopsie-d-un-inceste_6065168_3224.html 
  それまで彼女が専門とする法律関係のものしか書いてこなかった著者は本書で家族の秘密を通して、インセストの構造を描いてみたいと思ったという。 


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