2021年01月08日23時15分掲載  無料記事
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特権左翼たちの実態を暴露した「La familia grande」(大きな家族)を読んで セルジュ・ルグール(Serge Regourd 法学者 )

 先日、フランスの大物政治学者オリビエ・デュアメル氏がスキャンダルで辞職し、波紋を広げていることを書きました。10代半ばの義理の息子と性的関係を結んでいたとされる事件です。事実の出どころは家族(義理の娘)のカミーユ・クシュネルさんが書いた本「La familia grande」(大きな家族)で、今年1月にフランスで刊行されたばかりであるため、中身については未知数でした。そんな中、南仏の名門トゥールーズ第1大学(キャピトル校)で法学教授をつとめてきたセルジュ・ルグール(Serge Regourd 法学者・現在は名誉教授)氏が本書を読んだ感想を記していたのを読み、ルグール氏の承諾を得て、日刊ベリタに翻訳いたします。 
 
 
以下は翻訳 
 
「私はこの素晴らしい本を読んだばかりだ。本書は刊行される前からすでに評判になっていた。法学部の教授の堕落が暴露されており、その男は長い間に渡ってメディアや権力者のサークルにも座を占めてきた人物である。 
本書は地位の高いブルジョアの人物の卑劣な振る舞いについて語っており、その男は本来、父親として保護し、育成すべき一人の子供に性的な虐待を行っていた。だが、本書の価値はその告発だけにあるのではない。文章の驚くべき質の高さや、生き生きした感受性と底を流れる傷ついた心、さらに特権左翼として知られた人々の現実生活と風俗の描写などにある。彼らは自分たちの理想とは真逆の生活を享受していたのだ。著者に対しては脱帽する。その眼差しは法学部に所属する人々の小さな弱点や虚栄をも見つめている。」 
 
セルジュ・ルグール 法学者 
Serge Regourd 
 
 
  ところで、私はここで腐敗して権力と金力を備えて理想と裏腹の暮らしをしている人々を「特権左翼」と訳しましたが、原文はGauche caviarで「キャビアの左翼」となります。ルグール氏によると、このような人々は左翼とは名ばかりで、実際には理想を裏切り、労働者の階級を裏切っていることになります。この問題は、パリ五月革命の68年世代の歴史とも関係しているようであり、それらはもちろん日本にも関係してくるテーマかもしれません。そして、そのことが2012年に生まれた社会党のオランド大統領の左派政権の没落とどう結びつくのかは今後の研究が必要です。私は近年、世界の先進諸国で顕著な極右政治家の台頭と左翼知識人層や左翼政治家の特権階級化の問題はコインの裏表であり、通底していると感じます。その意味でも本書「La familia grande」(大きな家族)は興味深く思われます。 
 
 
翻訳 村上良太 
 
 
 
■Sciences Poを指導してきたフランスの大物政治学者が義理の子供への性的虐待で糾弾される 30年前の犯罪を子供が暴露した本「La Familia Grande」で刑事事件に 
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■「Democratic Debacle 民主党の敗北」The defeat of Hillary Clinton was a consequence of a political crisis with roots extending back to 1964. ヒラリー・クリントンの敗北の根っこは1964年に遡る ジェローム・カラベル(社会学) 
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