2021年04月28日19時18分掲載
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環境
バイオマス混焼の石炭火力発電の増加に強い懸念〜NGOが声明を発表〜
国際環境NGO FoE Japanは4月27日、国内でバイオマス混焼の石炭火力発電所が増加していることについて「石炭火力発電を延命させ、温室効果ガス(GHG)の排出を増加させるとともに、森林生態系破壊の原因にもなる」と強い憂慮を示す声明を発出しました。
声明では、バイオマス燃料の多くが輸入に頼っていることを指摘。「バイオマス燃料を生産するために森林が伐採された場合、森林が長期にわたって樹木や土壌などに蓄えてきた炭素が放出される」とし、バイオマス燃料を混焼することはGHG排出削減につながらないとしています。また、「木質ペレットを生産するために北米の天然林が皆伐されるケースが報告されている」とも指摘。森林減少・劣化や生物多様性喪失など、生態系への影響も大きいとします。
さらに、石炭火力発電の維持・延命のためにバイオマス混焼が使われていると非難。既存・新設にかかわらず、直ちにFITの対象から石炭火力発電のバイオマス混焼を外すとともに、バイオマス混焼の石炭火力に対する優遇や例外扱いをしないことを強く求めています。
2019年度から、バイオマスと石炭を混焼する案件はFITの新規認定の対象外となりましたが、それ以前に認定された設備は今後もFITの対象となります。2020年11月末時点で、FIT認定を受けたバイオマス混焼の石炭火力発電設備は、わかっているだけでも37件あります。省エネ法における発電効率の算定方法では、バイオマス燃料を混焼することで発電効率を上げたとみなすことができます。このため、非効率石炭火力のフェードアウトに関する議論において、バイオマス混焼の石炭火力発電が、実際には多くのGHGを出していたとしても、フェードアウトの対象から外れる可能性があります。
声明の全文は、以下をご覧ください。
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/pdf/210427.pdf
2021年4月27日
バイオマス混焼の石炭火力発電の増加に強い懸念
〜石炭火力を延命させ、GHG排出増・森林生態系破壊の原因にも〜
国際環境NGO FoE Japan
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に認定されたバイオマス発電には、バイオマスのみを燃料とする発電設備だけでなく、バイオマスを混焼する石炭火力発電設備も多く含まれる。2019年度から、バイオマスと石炭を混焼する案件はFITの新規認定の対象外となったが、それ以前に認定された設備は今後もFITの対象であり続ける。2020年11月末時点で、FIT認定を受けたバイオマス混焼の石炭火力発電設備は、わかっているだけでも37件ある(FoE Japan調べ)。そのうち31件は亜臨界圧(SUB-C)と超臨界圧(SC)という、いわゆる「非効率石炭火力発電」である(別表参照)。
FITは、環境負荷の低減を目的の一つとする再生可能エネルギーを促進するための制度であるため、石炭火力発電設備を認定することは、その目的に相反するばかりでなく、気候危機を加速させる石炭火力設備の延命を助長することになる。また、FIT認定を受けた37件のうち11件は、新たに建設・計画された設備であり、FITが石炭火力の新設をも支援していることになる。
大手電力の石炭火力発電の約半数にあたる66基もバイオマス混焼を実施しており、なかにはFIT認定を受けているものも含むと考えられる。「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)における発電効率の算定方法では、バイオマス燃料を混焼することで発電効率を上げたとみなすことができる。このことが、混焼を後押ししていると推測される。加えて、非効率石炭火力のフェードアウトに向けた議論においても、この方向性が維持されることになったため、FITに認定されなくても、非効率石炭火力の延命のためにバイオマス燃料の混焼が今後さらに増加する可能性がある(注1) 。
バイオマス発電の燃料となる植物は成長過程でCO2を吸収するため、燃焼した際に発生するCO2を相殺できるとして「カーボンニュートラル」とされる。しかし、実際には、バイオマス燃料の燃焼はカーボンニュートラルではない。バイオマス燃料を生産するために森林が伐採された場合、森林が長期にわたって樹木や土壌などに蓄えてきた炭素が放出される。伐採された森林が元の状態に回復する保証はなく、回復したとしても、待機中に放出されたCO2を回収し終えるまでは、数十年から数百年の長い年月を要する。CO2は、栽培・加工・輸送の各段階において発生する。木質ペレットやパーム椰子殻(PKS)は多くを輸入に頼っているため、輸送において大量のGHGを排出する。これらライフサイクル全体におけるCO2排出と森林が回復しない可能性を度外視し、バイオマス燃料を「カーボンニュートラル」とすることは、気候変動を加速させる大きなリスクである。
これまでも、カーボンニュートラルの抜け穴については、世界各国で学識者が警鐘を鳴らしてきたが(注2) 、十分な議論がされないまま、GHG排出量削減対策の誤った根拠として利用され続けている。これらの理由から、バイオマス燃料を混焼する石炭火力発電は、FITの対象とすべきではないし、高効率とみなすべきではない。
また、バイオマス燃料生産による森林減少・劣化や生物多様性喪失など、生態系への影響もはかり知れない。木質ペレットを生産するために北米の天然林が皆伐されているケースが報告されている (注3)。インドネシアやマレーシアで生産されるPKSは、パーム油生産の際に発生する副産物である。パーム油の原料となるアブラヤシ生産のための農園拡大は、東南アジアにおける最大の熱帯林破壊の原因となっている。副産物といえども、バイオ燃料として市場価値が生まれれば、熱帯林開発の促進力が強まる可能性はある。一度失われた森林生態系が回復することは容易なことではない。現行のFITの事業計画策定ガイドラインや管理体制では、非持続可能な燃料を確実に排除することが難しく、生態系や生物多様性を脅かすバイオマス発電は、環境への負荷低減を掲げる再生可能エネルギーの根幹を揺るがすものだ。
気候危機回避のためには、石炭火力発電は可能な限り早期に全廃しなければならない。石炭火力の維持・延命のために、森林生態系破壊をともなうバイオマス混焼が使われていることは言語道断であり、気候正義に反する。
私たちは、既存・新設にかかわらず、直ちにFITの対象から石炭火力発電のバイオマス混焼を外すとともに、省エネ法における、石炭火力のバイオマス混焼の優遇を見直すこと、またバイオマス混焼の石炭火力に対する優遇や例外扱いをしないことを強く求める。
参考)主なバイオマス混焼の石炭火力発電設備
(出典:公表資料をもとにFoE Japan作成。2020年11月時点)
(注1)資源エネルギー庁 電力・ガス基本政策小委員会「非効率石炭のフェードアウトに向けた検討について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/032_09_00.pdf
(注2)たとえば、今年2月11日には、500名以上の科学者が連名で「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」とする書簡を、日本、アメリカ、韓国政府宛てに送付した。https://foejapan.wordpress.com/2021/02/16/letter-from-500-scientists/
(注3)Stand. Earth, April 2020, Investigation - Canada’s growing wood pellet export industry threatens forests, wildlife and our climate;
Partnership for Policy Integrity and Dogwood Alliance, March 2016, Carbon Emissions and Climate Change Disclosure by the Wood Pellet Industry – A Report to the SEC on Enviva Partners LP
※この記事はFoE Japanからの転載です。
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