2021年05月30日22時42分掲載 　無料記事
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農と食

グリホサート系除草剤、低レベルでもＤＮＡに損傷　ロンドン大学研究グループが発表

　ロンドン大学キングス・カレッジやラマツッーニ研究所などの研究グループは４月１３日、ラットを使った実験で、グリホサート系除草剤が、ヒトに対して安全とされる低レベルでもＤＮＡを損傷させるという研究結果を発表した。この研究結果は、ＥＵにおけるグリホサートの農薬登録を終わらせる可能性があるという見方がでている。論文はbioRxivに掲載されたが、まだ査読は受けていない。（有機農業ニュースクリップ）　
　
　研究グループは、グリホサートとラウンドアップ製剤（MON52276）をラットに投与し、９０日間の亜慢性毒性試験を行った結果、ラウンドアップは肝臓の９６の遺伝子の発現を変化させることがわかった。影響を受けた遺伝子は、ＤＮＡ損傷や酸化ストレスに関連する遺伝子や、概日リズム（体内時計）の乱れに関連した遺伝子だという。他の実験で、グリホサート単独でも同様の影響がみられるという。　
　
　また、肝臓への直接的なＤＮＡ損傷はグリホサート暴露によって増加することが分かったという。そして、グリホサートとラウンドアップの両方が、ＤＮＡのエピジェネティックな変化を引き起こすことがわかったという。　
　
　これらの実験では、グリホサートだけよりもラウンドアップ製剤の方が、より毒性が強くかったという。このことは、最近、ロンドン大学ロイヤルホロウェイの研究グループが発表した、マルハナバチへのラウンドアップ製剤に含まれる補助剤により影響が異なるという研究結果とも符合するものであり、活性成分だけが審査される従来の農薬登録では不十分なことを示している。　
　
　これらの結果はＥＵがグリホサートを禁止させる「爆弾」になる可能性がある、とGM Watchは指摘している。GM Watchによれば、ＥＵの農薬規制基準では、農薬の有効成分がどのような投与量であっても特定の種類の健康被害を引き起こすことが示された場合、禁止されなければならないことを意味していて、グリホサート単独で生きている動物のＤＮＡに損傷を与えるという発見は、規制当局がＥＵの法律に従えばグリホサートの使用を禁止することになるという。　
　
　・bioRxiv, 2021-4-13　
　　In-depth comparative toxicogenomics of glyphosate and Roundup herbicides: histopathology, transcriptome and epigenome signatures, and DNA damage.　
　　https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.04.12.439463v1　
　　https://doi.org/10.1101/2021.04.12.439463　
　
　・GM Watch, 2021-4-27　
　　Proven: Glyphosate herbicides change gene function and cause DNA damage　
　　https://www.gmwatch.org/en/news/latest-news/19776-proven-glyphosate-herbicides-change-gene-function-and-cause-dna-damage　
　
　この研究グループは今年１月、欧米の規制当局が安全とする低い濃度のグリホサートとラウンドアップが、ヒトの細菌叢を変化させる可能性があるという研究結果を発表している。今回、bioRxivに掲載された研究結果は、１月に発表された研究をさらに発展させたものだという。　
　
　論文の筆頭著者のロビン・メスナージ博士は、フランス・カーン大学のセラリーニ博士らが２０１２年に発表しセンセーションを巻き起こしたラウンドアップとラウンドアップ耐性ＧＭコーンを与えたマウスに生じた腫瘍が肥大化して死亡するという研究論文に名を連ねている。　
　
　・Environmental Health Perspectives, 2021-1-27　
　　Use of Shotgun Metagenomics and Metabolomics to Evaluate the Impact of Glyphosate or Roundup MON 52276 on the Gut Microbiota and Serum Metabolome of Sprague-Dawley Rats　
　　https://ehp.niehs.nih.gov/doi/full/10.1289/EHP6990　
　
　・Heartland Health Research Alliance, 2021-1-26　
　　Dr. Robin Mesnage on Groundbreaking Glyphosate-Microbiome Study　
　　https://hh-ra.org/2021/01/26/guest-blog-dr-robin-mesnage-on-his-groundbreaking-glyphosate-microbiome-study/　
　
　・GM Watch, 2021-1-27　
　　Glyphosate and Roundup disturb gut microbiome and blood biochemistry at doses that regulators claim to be safe　
　　https://www.gmwatch.org/en/news/latest-news/19677　
　
【関連記事】　
　・グリホサート製剤の補助剤でマルハナバチの死亡率に大きな差　補助剤の評価が必要　
　　http://organic-newsclip.info/log/2021/21041113-1.html　


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