2021年08月09日13時18分掲載  無料記事
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みる・よむ・きく

マチュー・ポット=ボンヌヴィル著「もう一度・・・やり直しのための思索」

  昨年5月に出版した拙訳による「もう一度・・・やり直しのための思索」を1年以上の時を経て再読してみました。著者は哲学者のマチュー・ポット=ボンヌヴィル氏ですフランスではミシェル・フーコーの研究者として著名ですが、同時にポンピドーセンターで文化的な催しを企画するディレクターの仕事をされています。 
 
  原書は「Recommencer」。全体は7つのエッセイから成り立っており、それぞれ欧州の哲学者や論理学者、政治哲学者、文人、政治運動家などのエピソードをひも解きながら、物事を再開したり、やり直したりすることにまつわる難しさや落とし穴、課題などを考察しています。 
 
  初めての翻訳で、しかも原書が実験的な文体だったこともあり、フランス人の翻訳者の監修を経て、ようやく出せたものだったので、結果的に良い訳なのかどうか、実は少し不安があったのです。翻訳文体という風にネットで評をされた方もいました。でも、今読み返してみると、悪くないと僕には思えたので、ほっとしています。 
 
  本書を刊行した時はまさに東京都に1回目のコロナの緊急事態宣言が出されたばかりで、書店は閉店中という惨憺たる時期でした。あれから1年以上たった今、あの頃はまだましで、今はもっと惨憺たる有様になっていますよね。だからこそ、この国もそうだし、個々の企業や家族もどうやって再構築するかが大きなテーマになっているのではないかと思います。この本は安直なノウハウ本ではありません。しかし、だからこそ、未来を作るための力を得る知的ドリルになると思います。 
 
 
村上良太 


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