2021年08月18日23時02分掲載
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国際
タリバンのアフガニスタンをどうみるか 国際協力NGO活動者の視点 大野和興
米軍の撤退で瞬時に全土を掌握、政権を奪回したタリバーンが、これからどのような存在になるのか、さまざまな報道が乱れ飛んでいる。日本のメディアはタリバン極悪説が支配的で、ネガティブな報道が目立つ。しかし、長年アフガニスタンに駐在し、人々の暮らしの再興に現地の人々と一緒に働いてきた日本のNGOの中には違った見方が出ている。国際協力NGO日本国際ボランティアセンター(JVC)は米軍侵攻直後から現地に事務所を置き、医療や女子教育などに尽力していた。当時筆者もJVC理事の一員として、その活動を注視してきた。アフガニスタンの人々と関わり続けている当時のスタッフの見方、視点を紹介する。(大野和興
谷山博史(JVC前代表、アフガニスタン現地事務所長)さんはアフガニスタンの人権NGOのタリバーンに対する動きを紹介しながら、
「報道では相変わらず過激派タリバーンだの、女性の権利が抑圧されるだのと判で押したようなことしか言いませんが、タリバーンに対する私たちのマインドセットを変えない限り和平もなければ、タリバーンが住民を人質に凶暴化するのを防ぐことも出来ないのです」と述べている。
そして、「私がアフガンで活動していた時、タリバーンより米軍のほうが怖かった。米軍がスタッフの母親を銃撃した時私は米軍に乗り込んで談判しました。そこに若いサビルラがいました。今サビルラは当時の私よりずっと賢明な仕方でタリバーンと対話しようとしているのです。そしてそんなことが地方の現場ではできているのです」という。
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また、2005年から12年までアフガンの現場で活動した長谷部 貴俊(JVC前事務局長)さんは、米国などいわゆる先進国が当時のアフガニスタンで何をしてきたかを振りかえる。
「2005年から12年までアフガンの現場に入り、ありがたいことに今もさまざまなアフガンの人々とつながり、彼ら、彼女らの悲しみをみてきました。明らかにアメリカの目的はアフガンに欧米的な民主国家、さらに言えば自分たちに都合のいい国家を建設することだったと思っています。アメリカはじめ、欧米諸国はさまざまな開発プログラムや「普遍的である」と西欧が信じる選挙制度の支援に巨額の支援をしてきていました。」
長谷部さんは続けて
「2008年ごろをピークとして、欧米の軍隊が多くの一般人を殺害してきたアフガンの現場の悲しみを見てきました。また、地域社会システム、文化を蔑ろにした欧米はじめとする政策に、憤慨する長老たちと会ってきました。アフガンのこの20年は、単なる軍事的な失敗だけでなく、日本を含めた過去20年の諸外国の取り組みそのものが失敗だったのだときちんと認識するところしか、次は始まらないと信じています。」と語る。
長谷部さんはさらに続けて、現在滞在中のイラクのアルビルで読んだサバルタンスタディーズの大家、パルタ・チャタジー氏が2001年9・11の10日後にコロンビア大学で学生に語った講演録の一節、「私たちが目のあたりにすることになるのは、おそらく、いつものアメリカの傲慢さと暴力と無神経さであろう。悲しいことだが、たぶん、20世紀に起こった多くの戦争と結局何もかわることがないものとなるだろう」を引用しながら、「これはアメリカだけでなく自衛隊をインド洋派遣をするなどしてアメリカに賛成した日本にもつきつけられた大きな大きな課題です」と結んでいる。
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