2021年11月15日00時07分掲載  無料記事
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難民

「あなたたちは普通の人間ではない」 仮放免者が悲痛な訴え 学生・市民団体がオンラインイベント開催

 就労や自治体での住民登録が認められず,公的な医療制度へのアクセスも断たれた“仮放免”の状況にある外国人は,全国に約3,000人ほどいるとされる。日本は国として難民条約に加入してはいるものの,実際に難民として認められる者はごくわずかで,難民として認められなかった者は,仮放免という不安定な立場で「いつ入管施設に収容され,強制送還されるかわからない」という不安と戦いながら日々の生活を過ごすことになる。入管施設に収容された在日外国人は実際にどのような扱いを受け,このような制度がまかり通る日本の現状をどのように受け止めているのか。11月13日に行われたオンラインイベントでは,現在仮放免の状態にある当事者がその思いを語った。主催は,BOND〜外国人労働者・難民とともに歩む会〜。 
 
 当事者として発言をしたのは,スリランカ人男性で仮放免の状況にあるナヴィーンさん。ナヴィーンさんは,お父さんがスリランカ政府に反対する活動に関わっていたことで迫害を受け,これをきっかけとして2004年に来日したという。入管施設にはこれまで3回収容され,その内の1回は入管側から「所定の住所地に住んでいない」という誤った判断をされたことが原因であった。ナヴィーンさんが入管施設に収容された際,入管職員は「ビザが切れたあなたたちは,普通の人間ではない」と述べ,収容されている人々を人間扱いしていなかったという。このような人権を軽視した入管の姿勢について,ナヴィーンさんは「本当にひどいと感じる」と強い口調で語った。 
 
 また,就労が許されていないナヴィーンさんに代わり,家族4人の生活を支える配偶者のなおみさん。ナヴィーンさんが収容された際には,働きながらも週に一度は必ず収容施設に赴き,面会を続けていた。通常であれば30分ほどの面会時間も,面会者が多いなどの理由で10分ほどに制限されることもあり,往復で2時間かけて面会に赴いていたなおみさんは「(収容されている者の)配偶者にまでこのようないじわるをするのか」と強く憤りの思いを感じたという。また,なおみさんは,ナヴィーンさんが仮放免となった現在の状況について「主人は働いてはいけないと言われており,これを破ればいつ収容されるかわからない。私一人で4人の生活を守るのは大変」と苦しい胸の内を語った。 
 
 さらに,コンゴ民主共和国出身で仮放免の状態にあるムセンブラ・サイさんと2017年に結婚した晴佳さん。当初は,「結婚すれば在留資格が得られるだろう」と考えていたというが,未だに在留資格を得ることはできていない。ご主人の就労が許されていないことから,現在は,晴佳さんと3人のお子さんが対象となる生活保護費と育児休業手当で日々の生活費を賄っている。ムセンブラさん夫妻は,このような先の見えない状況に不安を感じ,「何か私たちに不備があるのか」と自分達を責めてしまうこともあるという。晴佳さんは「”健康で働ける人が在留資格がなくて困っている”という今の状況をどう思うか」と現在の制度の在り方に疑問を投げかける。晴佳さんは現在,同じような悩みを抱える人々と横の繋がりを作りつつ,サイさんが一刻も早く在留資格を得られるよう,署名活動に取り組んでいる。https://bit.ly/3Ceg7A6 
 
 今回,仮放免の状況に置かれている人々が訴え掛けたような,日本の入管行政における人権軽視の姿勢は,これまでも国連機関や市民団体などから再三指摘され続けてきた。しかし,難民認定率が向上する兆しは一向に見られず,収容期間に上限を設ける,司法審査を導入するなどの,基本的な改善策も未だ取られないままにある。今年5月に当時の菅政権下で入管法改正案が廃案となった際には,今回のイベントを主催したBONDの学生メンバーを初め,多くの若者の声が国会前で木霊した。衆院選が終わり,結果として自公政権からの大きな変化はなかったものの,それはこれまでの入管行政の在り方がそのまま認められたというものではない。人権意識を持つことは国際的にも当然のこととなりつつあり、世界の流れを敏感に感じ取っている若者の声を無視し続ければ,日本は世界から取り残されることとなる。入管行政と人権の在り方が注目される中,岸田政権は「票にならない」などと,この問題を無視し続けるようなことが絶対にあってはならない。BONDでは、今後も同様のイベントを開催し、問題意識の啓発に繋げていく予定であるという。 
 
以下、BONDのホームページ。https://nanmim-bond.amebaownd.com/ 


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