2021年12月19日16時23分掲載  無料記事
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文化

コロナ時代に再読したジャン=フィリップ・トゥーサン著「浴室」〜 YouTubeチャンネル「フランスを読む」から〜

  ジャン=フィリップ・トゥーサン著「浴室」(La salle de bain)が日本で翻訳出版されたのは1990年1月。バブル崩壊と同時に、冷戦終結、そして平成の始まりという節目の時期でした。「浴室」は野崎歓氏の最初の翻訳でしたが、「浴室」の大ヒットを受けて、野崎氏は「ムッシュー」や「カメラ」「ポートレイト」など、次々とトゥーサン作品を翻訳しました。 
  しかし、21世紀に入ると、時代が変わり、トゥーサンを知らない世代が生まれ、残念なことにトゥーサンは日本の若者から遠い作家になってしまったのでした。もちろん、時代を越えられない作家ならば、一過性の作品として、その運命を甘受するしかありません。とはいえ、トゥーサンの「浴室」を最近、読み返してみて、全然古びていないことを確認した次第です。そもそも小説「浴室」には古びてしまうような時事的な話題もありませんし、登場する若者の像は古びるどころか、ますます今日的と言ってもいいくらいなのですから。 
 
■「フランスを読む」(第16回目)野崎歓氏の語る「浴室」 
https://www.youtube.com/watch?v=9gURMXkYnck&t=8s 
  今回、縁あって、今年立ち上げましたYouTubeチャンネル「フランスを読む」で翻訳者の野崎歓氏に、「浴室」の魅力や1989年から翌年にかけての翻訳当時のエピソードを語っていただきました。コロナ禍の中で、今、私たちはだんだん閉じこもりがちになっていますが、そういったところは「浴室」と妙に重なってくるではありませんか。野崎氏も語っているのですが、この小説はコロナ時代にこそ、読まれるべき小説ではないだろうか、ということなのです。内向きになりがちな私たちですが、世界に目を向けて、「浴室」から一歩踏み出したいものです。 
 
 
村上良太 
 
 
 
■作家ジャン=フィリップ・トゥーサン氏にインタビュー  〜衝撃的デビュー作「浴室」はどのようにして生まれたのか?〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611101342434 


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