2022年04月28日16時03分掲載
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欧州
メルケル首相以後、増大してきたドイツの兵器輸出額 2012年のサウジアラビア向けの兵器輸出の突出は何に使われたのか?
ナチスドイツの歴史に対する反省から兵器輸出に慎重であったはずのドイツは、メルケル首相時代から積極的な武器商人への道を歩み出した。これはドイツ経済が軍産複合体と深くつながってしまったことを意味している。ドイツの公共放送DWが近年のドイツのサウジアラビアへの兵器輸出額をグラフに示している。
※Germany extends ban on arms sales to Saudi Arabia(DW)
https://www.dw.com/en/germany-extends-ban-on-arms-sales-to-saudi-arabia/a-48107734
これを見ると、明らかにサウジアラビアへの兵器輸出額は2012年に突出して増大した。2011年に1億3000万ユーロ台だったドイツのサウジアラビアへの兵器輸出額は翌年の2012年には12億3000万ユーロ台へと10倍近いとてつもない伸びをしめしたのである。さらに、その後も以前よりもかなり増額していることがわかる。いったい何が中東でおきていたか。
当時を振り返ってみると、2010年末にチュニジアで始まった「アラブの春」がアラビア半島まで飛び火して、サウジアラビアの王室は民主化運動の鎮圧に乗り出す必要があった。まさにこの時期、ドイツは戦車などをサウジアラビアの王室に向けて多数輸出していたのである。そればかりでなく、サウジアラビアが「アラブの春」が飛び火したイエメンへの軍事介入を行ったのもこれ以後であった。イエメンでは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦が率いるスンニ派連合軍とイランが率いるシーア派の代理戦争が始まっており、今も終息したとは言えない。長期にわたる内戦が続き、30万人以上の市民が死亡したとされる。ちなみに、マクロン大統領のフランスもアラブ首長国連邦などに兵器輸出を行っている。欧州連合やNATO諸国は、「アラブの春」に関して、一方では反政府側に(シリアやリビアなどに)、一方では政府側に(サウジアラビアやアラブ首長国連邦などに)最新兵器を輸出・提供してきたのである。そこにあるのはイデオロギーや正義が何であれ、常に兵器輸出は金になり、国を富ませる、という事実である。
ドイツのサウジアラビアへの兵器輸出について、当初、メルケル政権は「イエメンの内戦には使われません」、と明言していたが、実際には内戦に投入されていたことがメディアで暴露された。一連の事態を見ればわかるように、メルケル首相時代に、ドイツの兵器輸出は現在紛争を行っている地域へ輸出されることが事実上解禁となったのだった。カショーギ記者がサウジアラビアによって惨殺されたことがメディアを賑わしたことで2018年以来、メルケル政権はサウジアラビアへの兵器輸出を一時的に控えた。しかし、紛争地に兵器を輸出する方針は、今、政権こそオーラフ・ショルツ首相(社会民主党)に交代したとしても、戦争中のウクライナへ兵器を輸出している事態へとまっすぐにつながっている。いったい、ドイツのサウジアラビアへの兵器輸出は民主主義とどうつながるのだろうか。私は「民主主義」の擁護者ドイツという看板には疑問を感じざるを得ない。
※ドイツの兵器輸出が新記録(DW)
German arms exports hit new record during Merkel's last days
https://www.dw.com/en/german-arms-exports-hit-new-record-during-merkels-last-days/a-60256034
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