2022年04月29日11時46分掲載  無料記事
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欧州

ロシアとウクライナの戦争から見える現実〜チャオ!イタリア通信 サトウノリコ

 ロシアがブルガリアとポーランドへのガス供給をストップするというニュースが報道されましたが、ロシアとウクライナの戦争からロシアとヨーロッパの戦争に変わっていく可能性もあるのか、と不安な気持ちになりました。 
 
 イタリアは、ガスの全消費量のうち約40%をロシアに依存しています。現在、その状況を変えるために、外相と環境移行相がアフリカのコンゴ、アンゴラと交渉しています。イタリアは、ロシア(38.2%)、アルジェリア(27.8%)、アゼルバイジャン(9.5%)、リビア(4.2%)、および2.9%から北ヨーロッパ(特にノルウェーとオランダ)からガスを輸入しています。イタリアはガスの全消費量の約96%を輸入に頼っています。今後12か月以内にロシアに依存している量の半分を他の国から輸入するという方針で、現在イタリア政府は他の国々との交渉に動いています。 
 
 イタリアで生活し始めて15年目になりましたが、この戦争のおかげで(というか、この戦争のせいで)現実に目を開かされています。イタリア以上にロシアからガスを輸入しているのは、ドイツですが、ここ数年イタリアで見られる裕福なロシア観光客の背景には、こうしたガス事情があったのかと思い知らされています。知られている通り、イタリアは観光大国ですが、ここ数年は中国人とロシア人の観光客が目を引きました。私が住む町は小さい町ですが、そこでもコロナが始まる前にピッツァ屋でロシア人観光客のグループを見ました。フィレンツェならまだしも、こんな小さな町に泊っているのかと驚いた記憶があります。こうしたロシア人たちが、ヨーロッパ諸国が購入しているガスのおかげで豊かなになったと思ったら、そしてこの戦争がこうした豊かさを背景に始まっていると思ったら、どうでしょう。今の世界がどんなふうになっているのか、私たちがどういう連鎖の中で生きているのか、少し暗澹な気持ちになります。 
 
 ロシアとヨーロッパの関係もそうですが、中国との関係もそうです。ここでも「made in China」はどこにもあります。先日、イースターの休暇で家族とローマに行ったのですが、お土産に買ってきたコロッセオのミニチュアの裏に「made in China」の文字を見た時は、思わず苦笑いしてしまいました。グローバル化という波は私たちの生活の中に入り込み、精神にも入り込んでいます。価格の安いものを買うという習性がついてしまい、1ユーロ2ユーロである程度のものが買えることで、物を大切にするという精神を忘れてしまっているような気がするのです。特に、子どものおもちゃがそうです。1ユーロ2ユーロでいつでも買えると思うと、すぐ壊れても、すぐ失くしても全く興味なしで、子どもたちに「ものを大切にする心」を教えることが難しくなってるのかなと、時々自分が子どもの時リカちゃん人形を大事にして遊んでいた気持ちをどう伝えたらいいのかと戸惑います。 
 
 先日、報道番組で地中海に浮かぶ小さな島であるキプロス共和国やイギリスがロシアの富裕層にヨーロッパのパスポートを与えていたということを報道していました。もちろん、ただで与えるわけはありませんから、そこに金銭が介在するのは明白なのですが、ここイタリアでは高額の屋敷を購入したりということが言われています。ロシアの富裕層にとっては、いわゆる自分たちの財産を活用しているわけです。つまり、ロシアの富は国内にあるのではなく、外国にあるということになります。そうすれば、彼らにとっては戦争が起ころうが、自分の富は安泰です。いざとなれば、ヨーロッパのパスポートで海外に逃げることも簡単です。 
 
 富裕層は安泰で、それ以外は戦争に駆り出されたり、1ユーロ2ユーロのものを買って生活しているというのが、今の世界なのかと思ったりもします。今月も、今までになく高いガス料金の請求書が届き、1か月の私の給料は半分近くガス、電気料金に持っていかれるとため息です。 


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