2022年05月04日03時22分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202205040322223
みる・よむ・きく
アラン・コルバン著「静寂と沈黙の歴史」
アラン・コルバンと言えばフランスの歴史学者で、感性の歴史学という分野を切り拓いた人として著名です。たくさんの本を書いており、日本でもたくさん翻訳が出ています。筆者自身も以前、日刊ベリタでコルバン著「記録を残さなかった男の歴史」について書いたことがありました。非常に独創的でありながら、同時に深く考えさせられるものがありました。「記録を残さなかった男の歴史」はフランスの地方に住んでいた一切の言動の記録が残っていない木靴職人フランソワ・ピナゴの人生を様々な統計資料や役場の歴史文書などを調査して、描き出したものです。
歴史を歴史的に顧みると、戦争に勝利し、権力を奪った人間たちが彼らの目線で書き下ろしたものが基本的には「歴史」です。敗者たちの視点は放置すると、消えてなくなってしまうものです。敗者でなくとも、貧困だった人々や読み書きのできなかった人々の歴史は、はるかに残りにくいモノでしょう。そういう意味で筆者は「記録を残さなかった男の歴史」は、従来の歴史観とは異なる歴史の提示であると思い、非常に刺激を受けました。さらに、記録のない人間をここまで追跡し、豊かに描けるものなのかという驚きを感じたのを覚えています。
今回、私が制作していますYouTubeチャンネルの「フランスを読む」では、アラン・コルバンについて慶應義塾大学教授(フランス文学・文化史)の小倉孝誠教授にお話しいただきました。小倉教授はコルバンの書籍を多数翻訳しており、今回はその中から「静寂と沈黙の歴史」についてお話しいただきました。「静寂や沈黙」にいったいどんな「歴史」があるのか、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、そういう方にはぜひお薦めです。
※YouTubeチャンネル「フランスを読む第24回」
アラン・コルバン著 「静寂と沈黙の歴史」
https://www.youtube.com/watch?v=2xdUWhMrNSc
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。